main
□FutureFish!! 番外編2
1ページ/4ページ
『....................んん........』
とある日の朝。今日はお店が休みということで私は少し遅めに起きようと思い、ベッドの中で寝ていた
しかしそれを邪魔するように誰かが私の肩を揺する
『................ん?』
片目を開けて自分の幸せな時間を壊そうとする犯人を見る
『どうしたのー........?』
眠い目を擦りながら私が声をかけたのは、すぐ目の前で私の目覚めを今か今かと待ち構えているハルカだった
「!!」
『え?!ちょっ........』
私が目を覚ましたのを確認した瞬間、私の腕を引っ張ってベッドから引きずり出す。そのままリビングに連れて来られた。まだ寝ぼけている私は状況がさっぱり分からない
「っ!」
手を離したハルカはおもむろにテレビを指さした
『?』
《現在、○○水族館では海の生き物祭りと題しまして数多くの魚や海の生き物を見ることができ............》
テレビに映っていたのは、毎朝見ているニュース番組で、今日はどこかの水族館を特集していた
『........水族館?』
ハルカを見て尋ねるとハルカは大きく頷いた。いつにも増して水色の瞳がキラキラしている。
(水族館かー。まあ今日はお店休みで暇だし、ハルカがそんなに言うなら........)
『........行く?』
「っ!!!」
私の言葉にこれまた嬉しそうに反応する。多分“いいのか!?”って言いたいんだろうなー
『いいけどその前に洗濯物干して台所の片付けをしないと........』
「!!」
そこからは凄かった。バビュンという効果音がつきそうな程の速さでハルカは私の前から姿を消し、洗濯物を運んできて干し始めた
(そんなに行きたいんだ)
ハルカの迅速な行動が、宿題終わったら遊園地連れて行ってあげるよと言われた子供のようで、見ていて少しおかしくなって私は笑った
という訳で、2人で朝食を食べた後。台所の片付けも済ませて家を出た。
向かっている途中、電車の中でもハルカはそわそわと落ち着きのない様子で本当に子供みたいで少し可愛かった
そしてやって来ました
「....................」
ハルカくん初めての
「............................!」
水族館!!!(笑)
「!!!」
『水族館なんて久しぶりだな〜』
小さい頃はよく行ったけど外観はほとんど変わっていない........と
ツンツン
『?....ハルカ?』
さっきまでウキウキしていたハルカは、続いて驚いたような顔で水族館の建物を見ながら私をつついた
『どうかしたの?』
「....................」
私の質問にハルカはズボンのポケットから小さなメモノートとペンを取り出して何か書き始めた
ハルカが“こっち”の世界で暮らし始めて以来、仕事や普段の生活の中でも喋れないと困ることが出てきたため、そういう場合はこうして紙に書いて自分の気持ちを伝えるようにさせている。
そして最近は人間が使う文字も教えてあげていた
「........。」
数秒後、書き終えたハルカがノートのページを私に見せる。書かれていたのは文字ではなくて絵だった
(えっと........海。の中に通路があって、その中を人が歩いて........)
『もしかして水族館ってこういうの想像してた?』
「........コクリ」
なるほど。確かにこんなの想像して来て、普通の建物だったら少しはがっかりする........のかな
『まあそんなに落ち込まないで、外見に囚われちゃだめだよ!早く行こっ!』
私達は歩き出した
「〜〜〜っ!!!」
中に入るな否やパッとハルカの顔が輝く
薄暗い通路に両サイドの壁に埋め込まれる形で設置されている水槽。その中では色とりどりの魚が泳いでいる
『ちょっとハルカ!あんまり離れないでよ!?』
ズンズンと歩いて行こうとするハルカに声をかけると笑って頷いてまた歩き出した。
私の言う事全然聞いてない!
『もうっ!』
慌ててその後を追いかけた
「っ!」
と、ハルカが1つの水槽の前で足を止めた。じーっとそれを見て私を手招きで呼び寄せる
『どうしたの?』
歩み寄るとハルカは水槽の中の魚を指さした
『あ!クマノミ!』
そこにいたのはオレンジ色の鮮やかな小さなクマノミ達だった。イソギンチャクの中から顔を出し入れして泳いでいる
「....................」
ハルカはそれを興味津々に見つめた
『もしかして見た事ない?』
「........コクリ」
『この辺の海にはいないもんねー』
2人で水槽をのぞき込んでひらひらと泳ぐクマノミを見つめた........
所々で立ち止まって色々な水槽を見ながら歩く。それで初めて気づいたけど、どうやらハルカは海で自分が見た事ないものに物凄く興味を持つようだ。
初めて見る魚は食い入るように見ている。その姿がまた子供のようで面白かった
そんな中、続いてやって来たのは....
『うわーっ!』
「!!!!」
恐らく水族館の看板とも言えるだろうパノラマ大水槽。
大型のサメや群れをなす魚たちがゆうゆうと泳ぐその迫力に私達は目を奪われた
『前から思ってたんだけどサメってさ、なんか凛みたいだよね!なんかこうギラギラしてるっていうか................ハルカ?』
隣に立つハルカを見ると、私の声など聞こえていないかのようにじっと水槽を見ている
でもさっきとは違い、好奇心の眼差しではない。....何かを思い出すような、遠くを見つめるような瞳........
『................?』
不思議に思ってもう一度名前を呼ぼうとするとハルカは水槽に向かってゆっくりと歩き出した
水槽の目の前で止まり、ゆっくりと右手を伸ばして水槽のガラスに触れる....
『っ!?』
するとどうだろうか。水の中のサメがハルカのすぐ近くまで集まってくる....
それを見てハルカはふわりと笑った
『........................ハルカ?』
近づいて声をかけると、ハルカは振り返って嬉しそうに笑った。と、同時にサメたちはまた散々になって自由に泳ぎだす........
その笑顔に私は胸を締め付けられるような気がした
《ピンポンパンポ-ン♪》
その静寂を破ったのは館内アナウンスだった
《お客様にお知らせ致します。まもなくメインプールにて、イルカのショーが始まります。お時間のある方はぜひご覧下さい............》
「!!」
放送を聞いたハルカがまた目を輝かせる
『あぁうん。行こうか、イルカショー』
「コクッ!!」
ハルカは元気良く頷き、私達はその場を後にした
⇒つづく