ごめんね。わからない。

□あなたは大切だから
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久しぶりに、彰を見た。

でも、違う。

前の、彰は明るかった気がする。


変わってしまったのは、尊がいなくなってしまうかもしれないから?


それとも、ーーーーまだ貴方の中にいる”彼”が惑わそうとしているの?



いつ、あなたはサルヒコに似たその人に、解放されるの…?



『…アンナ。』


私の頭を撫でるその手は、ミコトと良く似ている


ミコトと同じように優しい声で、私の名前を呼ぶ。

ミコトと同じように私を優しく見る。

その目は



ーーー…でも。


ミコトとは相反して、彰の手は…


酷く、冷たい。


貴方の心の雨は、前以上に酷くなっている。


泣き叫んでいる、泣きわめいている。


でのその声は、私にも聞こえない。



彰の心の雨の音が大きすぎて


聞こえない。


あなたはなんといっているの?

「彰…泣かないで」


だから、私はあなたが護ろうとしているミコトの赤で、あなたを温める。



『…大丈夫だよ、アンナ。心配しないで。』

そう、彰は笑った。


”尊は死なせない”からーーー。


違う。


彰。


違う。



ミコトにも死んで欲しくない、


けどあなたが死んでしまったらミコトは悲しむ。


タタラだけでもう、十分なんだ。


これ以上、ミコトもイズモも、悲しませないで。


「…彰。無理、してはダメ。」


『ごめんね、アンナ。
もう、尊が怖がるのは嫌なんだ。
兄貴としてね…弟を護るためには
俺が無理をするのは、しょうがないんだ』


ああ、あなたも…

ミコトと同じように「仕方がない」と笑う。


いなくなろうとする


いなくなろうとーー

ダメだよ。


「彰は!まだ生きてる!!
だから、あの人のところに行ってはダメ!

あの人も悲しむ…!きっと、彰が死ぬことなんて望んでない…!」

私は声を張り上げた。

ミコトもイズモも驚いたようにする。

でも、それほど。

彰は今回の戦いに参加させちゃダメなの。



『アンナ。
ありがとう…。
ーーー…ありがと。』


彰が私を抱き上げた。

冷たい。

けど、優しい。


「彰…」


『…大丈夫。
猿比古のこと、頼まれてるんだ。そいつから。
だからあいつをおいて逝ったりはしない

死なないよ。』


彰は心配させないように笑う。


きっとそれは私をまだ、無垢な少女だと思っているからだろう。


私は、彰に感謝をしている。

きっと吠舞羅は感謝している。


いつでも、何かあれば彰は飛んでいきてくれたから。

だから私たちも

あなたが大切。

「…うん。
彰は、黒に染まったりはしない
黒には負けない。
私が知っている彰は弱くないから。」


私はじっと彰を見た。

まだ、大丈夫。

黒い炎の中に、


赤い炎が混じって燃えている



その赤は、ミコトと同じくらいに



綺麗で私の好きな赤。
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