好きだよ、なんて。

□お願いだから
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幸せだったのに。


確かに俺は笑っていたよね

でもさ、


どうして、父さんは俺を見て


いつも一瞬だけ表情を歪めるの?


ーーー…その答えは今日わかってしまった。

目の前で鈍く光る斬魄刀の切っ先。


『父さん、 なんで…』

父さん、父さん。


なんで、俺にその刀を向けるの。


「隼樹…すまない。
このような形になって。本当に情けない父親だ。」


どうして、父さん。

泣いているの。


『…、父さん、俺のこと、いらなくなったの?』

「…隼樹、すまない。
父さんが全て悪いんだ。
ーーー…母さんを好きにならなければ…」


言わないで。


それ以上、言わないで。


聞きたくない。


言わないで

「お前も生まれてこなかったのにな」


父さん…ーーー。

俺。

産まれてきてごめんなさい。



でも、死ぬのは…怖いよ。


そう思った瞬間に父さんは俺に刀を振り下ろした。


死にたくない


死にたくない


いやだ。


怖い。


助けて、父さん。

『父さんっ、俺、しにたく、ない…!!助けてよ…ッ!!』


その言葉は無意識に口からこぼれた

ぎゅっと目をつぶって身構える。


きっと、俺は死ぬ。


そう思っていたのに痛みはやってこなかった。




そっと目を開けると


刀はもうオレに向かって振り下ろされてはなかった


その代わりに、



この目に映ったのは



刀を自らの首に添える父さんの姿。




「…ごめんな、隼樹。
お前はまだ生きたいよな。


例え、「虚」でも子供だもんな。


だから、父さんのことはもう。


忘れてくれ」



父さんは笑顔だった。


今までで一番綺麗な笑顔

「サヨナラ」


その瞬間に俺の視界に赤が舞う。

それが、何かは理解できた。


『…あ、ァ…、あ…!はっ…っ。
ーーーーーー…!!』


俺はしゃがみこんだまま声にならない言葉を吐き出すことしか出来なくて、


震える足で、立ち上がって


怖くて


…逃げたんだ。


でも、入口の方に駆けつけると一人の死神が入ってきてすぐ自体を把握したように俺を見た。



「…お前、虚か?」



死神が放った言葉に目を見開く。


虚という言葉父さんも言っていた。


虚がなにかくらいはわかっている。


でも、俺ーーーー?


違う、俺は。



違う。


違う。



俺は。



俺はーーー。



虚なんかじゃない。


化物なんかじゃない




違う



違う


『ちが、う!俺じゃない!
俺は虚なんかじゃない!!』


俺は叫ぶ。


違うと、声を荒らげて。

俺は、化物なんかじゃーーー。


「わ、わかったから、落ち着け!」


ああ、違う


違うのに。



あんたも。



俺を怯えた目で、見る。

でもその手にはしっかりと刀が握られていた。


『俺は、生きたい…!!』



だから、そのためならどんな手段だって




使う。



思いっきり地面を蹴って死神に体当たりを食らわせて外へと逃げる。


「おいっ、待て!!」


俺は死神の声を無視して走る。


その途中に飢えて
死んでいる人が握っている小刀を奪う。


息が切れる



苦しい、



苦しい




苦しい



必死に走った




けれどあまり外出をしない俺は土地の理がなく、行き止まりにぶち当たった。


後ろを向くと死神はすでに俺に手を伸ばしていた
















怖い怖い怖い。


俺は小刀を構える。


『う、わぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』

地面を蹴る

死神が何かを叫んだけれど



俺には届かなかった。




生暖かい感触が俺の手を濡らす。



鉄臭い香りが鼻をついた


刀を抜けば死神はそのまま倒れ込んだ


動く気配はない。


怖くなって泣きながら走り去った


遠くをめざすように


ただ何処へ行くなんて目的もなく



走る。


俺は、人殺しだ


もう戻れない



もう、許されない。





ねえ、お願いだからもう。



おれを



殺さないで。






この数ヵ月後、俺はルキアたちと出会い。




そして、瀞霊艇に連行されたんだ。

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