ごめんね。わからない。

□大丈夫だよ、と。
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「…というか、お前今までどこに行ってたんだ」


ふと尊が俺に問いかける。


ーーーどこに行ってた、か。

もうすぐ、いなくなろうとするお前が、


それを言うのか。



一瞬、だけ。
胸が苦しくなるが、それには気づかないふりをした。


『…世界一周旅行の旅ー』


クスクスと笑って冗談じみたように笑えば尊の頭を撫でた。

そして草薙を見る。


『……大丈夫だからな』


「…彰…?」


柔らかく微笑む。


ただそれしか今はできない。


大丈夫

ただその言葉しか言えない。



大丈夫。


尊は死なせない。


殺させない。


俺の、弟。



お前だけは亡くしたくない。


これ以上。


何も。亡くしたくなどないのだ。



あの人みたく、いなくならないで。



これ以上、何かを亡くすのは耐えられないよ。


苦しい、息ができない


悲しい もう涙をこぼすことも許されない。



…ただ空を見上げた。


その時、アンナが俺の服を引っ張った。


「…悲しいの?」


静かに問いかけた少女。


アンナに俺は、目を見開いてからすぐに首を横に振った。



大丈夫だよ、と。



笑うことしかできない。



こんな俺を、赦さないで。
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