03/16の日記

23:02
政佐(全部:シリアス)※流血表現、死ネタ注意
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「Ha……ッ真田の忍も落ちぶれたもんだな」

冷たく吐き捨てると、刀を振り刃の血を払った。
六爪を遣うまでもない。血濡れの、今しがた己が切り伏せたばかりの忍を見下ろし、政宗は鼻で笑う。

「はは、やっぱアンタには敵わないか」

仰向けに地に倒れている佐助は、戦場には酷く不似合いな人間くさい苦笑を溢すと、腕で顔を覆った。

「何やってんだテメーは」

鞘へと刀を収めた政宗は、不可思議な行動をした忍へと歩み寄る。

「空が眩しいの」

相変わらず顔を己の腕で隠したまま、佐助は竜へと言う。

「アンタと同じ、蒼い空が……」

雲一つない澄み渡った空。それとは不釣り合いな、血を吸った黒い大地。其処に横たわる忍。

「竜の旦那、最期にアンタと死合えて良かったよ。それに、こんな空の下で忍が死ぬなんて、スッゴい贅沢だよね」

クツクツと笑いながら忍が言う。
政宗は、しゃがみ込むと顔を隠す腕を掴み無言で退けた。

「でも、やっぱ…俺には眩し過ぎるな」

琥珀色の瞳から、ゆっくりと静かに雫が落ちていった。
それを見た竜は、表現を変えずに佐助の涙を拭ってくれる。

「竜の旦那。アンタと共に過ごした時間は、無駄なものではなかった。俺にとって、大事なものでもあったよ」

笑う忍に、政宗は愛おしそうに目尻へと口付けを落とす。

「でも、もう終わりにしよっか。」

血に紅く染まる手を伸ばすと、竜の頬を愛おしそうに佐助が撫でる。未だ乾ききっていない血は、竜の頬に紅い痕を残した。

「……佐助」
「なぁに?竜の旦那」

自分の頬に触れた手を掴み、それに口付け政宗が言えば、忍は穏やかに微笑む。

「この乱世、こうなる運命は変えられねぇ。それでも、俺らが出会い、惹かれ、共に過ごした時間は、意味があったのか?」

愛情を渇望している、寂しげな竜の独眼に佐助は罪悪感を抱いた。忍として沢山の罪を背負ってきたが、その何よりもこの瞬間が一番罪深い気がした。

「あったよ。少なくとも俺にはね。愛して、悲しんでくれる人が出来たことが、それがアンタであることが、何よりも意味があったよ」

政宗は、込み上げる熱い何かに気付かぬふりをする為に眼を閉じると、忍の唇へと自分のそれを重ねた。

竜の口付けに、佐助も静かに眼を閉じると、右目の辺りに暖かな雫が落ちてきて、新たな涙が流れて血に染まる黒い大地へと溢れ落ちていった。


最期の口付けは、甘く苦い、切ない血の味だった。



☆コメント☆
[紅奈] 03-16 23:09 削除
あとがき的な。
まず、死ネタすみません;
戦場の話書きたいな、と思ってたら、気付いたら死ネタになってました(苦笑)
別れがあると分かってるのに、会い続けた二人。で、いざ別れとなると、ツラいけどなんだか諦めちゃってると言うか、受け入れちゃってる感じ。政佐は其処んとこ割り切ってると思うんですよね。
お互いに相手の手に掛かって死にたいって思ってそうです。
ううん、難しいですな(^^;)
お粗末さまです_(__)_

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