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□憐慕(れんぼ)
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カタリと音を立てて櫛を置いた政宗は、口角を上げて言った。


「OK,動いて良いぜ」


満足げなその声に眼を開けると、鏡に映った己の姿に少なからず驚いた。


翡翠色の見事な着物を纏い、同色の簪で橙の髪を結い上げた姿に、一体誰が自分を戦忍だと思うのだろうか……。


「上出来だな。元が良いと着物も良く映える」


忍を着飾り、愛でて愉しいのだろうか。

そう思いながら佐助は抵抗せずに政宗の好きにさせた。端から自分は竜の玩具。拒否する権利などない。


「器用だね……着付けや髪結出来るなんて」
「Ah〜まぁ、役に立つのか立たねぇのか分かんねぇけど、半端ねぇ量の知識は餓鬼の頃から叩き込まれてるからな」


政宗はかなり器用で、今回の着付けも含め、佐助を着飾る際は全て自分で行う。
当然、忍である佐助も着物の着付けは出来るし、知識の量なら政宗に劣るとも思わない。ただ、面倒くさそう…と何時も佐助は思うわけで、何故だか政宗はそんな手間の掛かることも楽しんでいるらしい。



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