中編

□welbes
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一晩が過ぎてしまえば、驚く程ノーマの心境は穏やかだった。
夜中に起きてしまったのか、宿屋からウィルの家に戻った時はハリエットからそれこそ烈火の如く散々に非難を浴びたが、それすらノーマは嬉しかった。自分のことを想ってくれる誰かの優しさが、愛しかった。




「それじゃあ、アイツは何もしないまま大陸に帰るのか?」
「うん。明日の定期便で帰るってさ」


朝からウィルの家に集まった仲間達に、ノーマは昨夜のことを話した。
案の定、ハリエットに負けず劣らず随分と叱られたが、黙っていてはバレた時が更に大目玉を食らうだろうと思い腹をくくった結果だ。


「ま、あたしは帰らないけどね。そんだけ。な〜ぁんも変わんないからさ」


にこりと笑んで告げると、無理のない自然な笑顔が出来たと胸中で自画自賛する。
そんなノーマだったが、笑みは直ぐに苦いものに変わった。


「何が“そんだけ”じゃアホ」
「しょうがないですよ。ノーマさんにとっては“何も変わらない”程度のことらしいので」


二人の声に呆れたような、困ったような笑みを浮かべたクロエが視線を向ける。


「随分と言葉に刺があるようだが気のせいか?シャンドル、ジェイ」
「ええ。きっとクロエさんの気のせいですよ」
「ほうじゃほうじゃ」


しかし、クロエの言葉に素っ気なく返し、二人は尚もむくれたまま。ウィルはやれやれと肩を竦め溜め息をこぼした。



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