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□とある異界の料理はいかが?
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「新作の料理の味見をお願いしたいんです」

その言葉で数日前に夕食に誘われた“凛々の明星”一行は、タツナリの自宅に訪れていた。

アジトに居候生活をしていた時にタツナリの料理の腕は確認済だったので、全員安心しきっていたのだが。

「…食い物か? これ…」

「ヒィ!? ゆ、指!?」

「こんなに鮮やかな色のスープ、初めて見たわ」

およそ食材とはかけ離れた無惨な料理の数々に、三人は驚いた様子で呟いた。

緑色の卵が乗った黒いパスタ、妙にリアルな指の形をした固形物、目玉が浮いた鮮やかな紫色のスープ……etc

三人のドン引きな反応にもかかわらず、タツナリは満足そうににこやかに笑う。

「とりあえず見た目のインパクトは問題ないみたいですね」

「…なあ、何なんだよこれは」

暗黒料理か? とユーリが呟くとまんざらでもない様子でタツナリが頷く。

「エステルさんから化け物に変装するイベントがあるって聞いて、孤児院の子供達と試しにやってみる事になったんです」

「へ、変装?」

首を捻るカロルに対し、何となく事情を悟ったユーリは投げやりな口調で一応訊く。

「なぁ、エステルからどんなカンジで聞いてるんだ?」

「えっと…『化け物に変装したり、異界をモチーフにした食べ物を食べる』って聞きました」

俺は料理担当なんですとタツナリはニコニコと笑って言う。

いや、あながち間違ってはいませんけど。

若干エステル風なツッコミを心の中でしつつ、ユーリは深い溜め息をつく。

「…いや、あのな。こんなリアル路線はガキもビビるだろ」

「…子供達の意見を元に考えたんですけど」

怖いですか? と訊きながらタツナリは折り目がついた画用紙を数枚ユーリ達に見せる。

そのデッサン力に差こそあれど、タツナリの料理と見比べると確かにイメージ図通りの出来映えと言っても過言ではないが。

「…ハロウィンっつーと、こんなカンジの菓子を食うイベントと思うんだけどよ」

「ユーリさん案外ポップな絵描くんですね」

「ほっとけ」

手近な紙に描いたかわいらしくデフォルメされたオバケモチーフの菓子を見てタツナリが物珍しそうに感想を述べる。
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