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□Act.7
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背後から注目する視線に、タツナリは居心地悪そうに身動ぎして振り返った。
「あの…………何で注目するんですか…?」
「注目じゃねえよ、監視だ監視」
気にすんな、といった様子でヒラヒラと左手を振りながら言い放つユーリに、同意するジュディス。
「そうよ。不正があったら困るでしょう?」
「何の不正ですか…」
ジュディスさんのイカサマじゃあるまいし、と思いつつ(怖くて言えない)タツナリは元の向きに直る。
「さあ、タツ! 治療をしますので早く服を脱いで下さい!」
そこにはやたらと張り切った調子のエステルが手近なスツールに座って待ち構えていた。
ハルルの街にタツナリを連れてきた目的は、仲間であるエステルの紹介とは別に、タツナリの治療も兼ねていた。
本当はもう少し早く連れてくる予定ではあったのだが、なにぶん副帝のエステルは多忙の身。
相談自体はタツナリが目覚めた後直ぐにしていたが、エステルの予定とジュディスの予定が合わずに結局抜糸も済んでしまった今となっていた。
タツナリ自身は「抜糸も済んでるし申し訳ないし必要がない」と断っていたが、そこは“ほっとけない病”に罹ってしまったエステルの鶴の一声で無駄な抵抗となっていた。
何故か治療に張り切るエステルを目の前に、そして何故か背後に“凛々の明星”メンバーが見守る中、タツナリは謎の「さっさと脱げ」コールに巻き込まれる破目となっていた。
皆のテンションのおかしさに若干気味悪さを感じながらも、諦めたようにタツナリは着ていたシャツのみ脱いで上半身を晒した。
その上半身に縦横に走る無数の傷跡に、エステルも後の三人もギョッとする。
「タツ! 何、その擦り傷!?」
「おいおい、何でオレが拾った時より傷が増えてんだよ」
動揺した声で呟くカロルに、睨むように目を細めるユーリ。
ジュディスとエステルも申告のあった腹の傷ではなく、浅くはあったが無数に走る擦り傷を真剣な表情で見やる。
当のタツナリ本人は、一人置いてきぼりな様子できょとんとして前後に視線を走らせる。
「え。あの、これは昨日カロルと森に薬草を取りに言った際に使ったロープの痕ですよ。そんなに大げさにならなくても大丈夫ですよ」
タツナリの発言に崖を下る場景を思い出して納得するカロルと、訝しげな表情をするユーリ。
「ロープ痕って…おまえらどこでそんな縛りプレ…いやなんでもない」
「? 縛り?」
何だか危ない発言を言いかけるユーリに、カロルとタツナリは意味がわからず疑問符を浮かべる。
「ふふ、官能的ね」
「おい、ジュディ。未成年の前でそれ以上は自重しろよ」
「あら、私も未成年よ」
「何の話ですか?」
「なんでもねえよ」
これ以上突っ込まれまいと軽くあしらうユーリ。