Long

□Act.1
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「何でタツが……こんな」

未だ動揺を隠せぬ声音でカロルが呟いた。




目覚めぬ少年の傷をひとまずダングレストの医者に診せて一息をつく合間に、ユーリ達はカロルから少年について大まかな情報を聞きだしていた。

名前はタツナリ、通称タツ。

年は16歳。

カロルがまだギルドを渡り歩いている時に知り合った仕事仲間で、カロルの唯一無二の親友。

知名度は低いものの、あるギルドの首領でダングレストを拠点に活動している事。

戦いは苦手だが頭が良く、そつなく仕事をこなす為評判がいい事。

「誰かに刺される、なんてトラブル起こすような人じゃないのに……」

濡れタオルを少年――タツナリに乗せながらカロルはそれきり口を閉ざす。

予想通り熱を出したタツナリは、未だ一度も目覚める事なくベッドに横たわったままだった。

「でも、自分で自分を刺すような子でもないんでしょう?」

ジュディスが首を傾げながらカロルに訪ねると、とんでもないと言わんばかりに思いっきり首を横に振る。

「そんな事しない、絶対しないよ!」

「まあ、言っちゃあアレだがンな事出来そうな外見じゃねえよな」

ひ弱そう。

第一印象も()る事ながら、カロルの話を聞けば聞くほどそんな印象が型にはまる。

「刺し傷の件も、聞いた印象だとトラブルを起こしたって言うよりは巻き込まれたっぽそうだよな」

見た目がそんな感じだと、緊張感なくユーリが続ける。

「何にしても、真実は本人のみぞ知るって所か。ここで看病するんだろ、カロル先生?」

「そうだね、熱も下がらないしほっとけないよ」

「ギルドの人達には知らせなくていいのかしら?」

ボスなんでしょう、とジュディスが訊くがカロルは困った表情で、

「そうなんだけどボク、タツのギルドが何てトコなのか知らないんだ」

「ああ? 何だそりゃ、親友じゃなかったのかよ」

「最後に会ったのはユーリ達に会う前だったから…ボクが落ち着いたらお互いに仲間を紹介しようって決めてたんだ」

とりあえず何でも屋ってのは知ってるんだけど……と、何とも頼りなさそうな情報を口にする。

「その辺も本人が起きたら事情聴取だな」

「そうだね……」

溜息を吐きながら、カロルは再びタオルを濡らしてタツナリの額に置き直した。
 
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