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□アオイホノオ
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《兄の気持ちはオレが1番よく分かってるだってオレらは似た者同士だから》


ジェジュン兄が出ていった。

ジュンスが何度も「待って!ヒョンまってぇー!」と大声で叫んだのに、兄は何も言わずに静かにドアを閉めた。

ソファーには、へべれけになったユノ兄が身体を投げ出すように横になっていて、ジュンスはその身体を一所懸命持ち上げながら「ヒョン!ねぇ起きて!大変だって!ジェジュンヒョン出てっちゃったよ!ちょっと、ユノヒョンってばっ!」と叫んだ。

「ジュンス無駄だよ。こんなに酔ってちゃ起きられないって。」

そうオレがいっても、ジュンスは泣きそうな顔で兄の肩を何度も叩いた。ユノ兄は眉毛を上げてうんうんと頷き、さも聞いてるふうな顔をするけど、首まで真っ赤っかなのは相当に酔っている証拠で、結局一度も目を開けることなくずぶずぶとソファーへ沈んでいった。

ダイニングテーブルに座っていたチャンミンは、はぁと小さく息を吐いてオレと顔を見合わせた。

「あーやっぱり出て行っちゃいましたね。」

「うん。だって、あれじゃジェジュン兄怒るのも無理ないよな…。」

「ジェジュン兄大丈夫かな?もうこんな夜中だし。ボク見に行ってこようかな?」

「大丈夫だよ、少ししたら戻ってくるって。」

「僕ちょっとしたら電話してみます。」

「うん。あの様子じゃ今かけてもジェジュン兄出なそうだもんな。」

「それにしてもユノ兄、こんなに酔っ払って。よくここまで無事に帰ってこれましたよね…」

ほんとだよなって目をやると、兄はむにゃむにゃ寝言を言いながらジュンスの首に腕を回していた。

「んもー!ユノ兄重いっ!」

ジュンスは太い腕を持ち上げてよいしょと離すと、冷蔵庫まで小走りで駆けてペットボトルをプシューっと開けた。


兄達の些細な喧嘩はいつものことで。
でもオレらがなんとか仲を取り持ったり、あたらず触らずの精神で遠巻きに見守ってたり、どんな感じで兄達に接すればいいかは、今までの経験からもう3人とも十分くらい分かっている。


2人が険悪な状態になっちゃうと、オレ達はグループとしてほんとやりにくい状況になるし、特にジェジュン兄の怒ってる時(それはほとんどと言っていい程ユノ兄が絡んでる)には、もうとにかくいち早く対処しなきゃいけない。

なんてったってジェジュン兄は、オレ達の生活になくてはならない特別なオンマのような存在なんだから。


ジェジュン兄は怒りが頂点に達すると、鬼のように黙る。ふざけんな!ユノっ!って言葉が出てるうちはまだいい。何も喋らなくなる怖さの重圧感といったらもうみんな泣きたくなるレベルだ。


感情を表に出すわかりやすいユノ兄とは違って、ジェジュン兄のそれは心の奥で静かに炎を燃やすような怒りだ。言葉や態度を押し殺したまるで「無」な感じの。赤い炎より青いほうが温度が高いってよくいうよね。2人が喧嘩しても結局、ユノ兄の赤い炎はジェジュン兄の青い炎にあっという間に覆い尽くされちゃうんだ。


そんな時いつもジェジュン兄の話を聞くのはオレの役目で。何が嫌で、何が気にいらないのか、とにかくじっくりと聞いてうんうんと頷いてあげる。

女の子と一緒。とにかく胸の中のモヤモヤを一気に吐き出しちゃえば、なんかそれだけで安心してもういいや…ってなっちゃうんだから。



でも今回はヤバい感じがする。
出て行く時の兄の顔。オレは声が出なかった。


ユノ兄は何も知らずにがーがーと寝始めた。
ソファーから長い手足がだらんとはみ出してる。


あの様子じゃ今日のこと覚えてないんだろうな…


これからの地獄が痛い程分かってるオレ達は、お互い目も合わさずに「はぁ」と大きくため息をついた。



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