TOV 天を照らす銀河 最終章
□第71話 少女の正体
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幽霊船 アーセルム号
幽霊船に乗り込んだリョウたち。
カロル「パティはアイフリードが隠した宝物を探してたんだよね。アイフリードに会って記憶を取り戻すために」
パティ「んじゃ」
カロル「で、見つけたのがその麗しの星……なんだよね?」
パティ「そうなんじゃが……ちょっと違うのじゃ。麗しの星はアイフリードが探してたお宝なのじゃ」
リタ「は?あんたが探してたものとじいさんが探してたものが同じってこと?それでじいさんに会えるの?」
パティ「麗しの星を使えば会える……それは間違いではないのじゃ」
突然、どこからか咆哮が聞こえてきた。
リョウ『な、なんだ?』
ユーリ「上だ!」
船長室の上に髑髏の騎士が立っていた。
リョウ『あの魔物は前に……』
パティは急に走り出した。
エステル「パティ!」
リョウ『俺たちも行こう!』
甲板に出たリョウたちの前に髑髏の騎士が現れた。
リタ「で、出たっ……!」
パティ「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」
カロル「サイファーって……アイフリードじゃなくて?」
レイヴン「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だわね、確か」
髑髏の騎士は浮き上がって上空に移動した。
パティは髑髏の騎士を追いかけてマストへ登る。
パティ「サイファー、長いこと待たせてすまなかった。記憶を失って時間がかかったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」
リョウ『記憶が戻っていたのか……』
髑髏の騎士「アイフリード……」
パティ「……!」
髑髏の騎士の身体から男性の幻が姿を現した。
サイファー「アイフリード、か……久しいな……」
カロル「アイフリードって、え?まさか……?」
パティ「アイフリードは……。うちのことじゃ!」
リョウ『どういうことだ……?』
パティ「サイファー、うちが分かるのか!?」
サイファー「ああ……だが、再び自我を失い、おまえに刃を向ける前にここを去れ」
パティ「……そういうわけにはいかないのじゃ。うちはおまえを解放しにきたのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」
サイファー「俺はあの事件で多くの人を手にかけ、罪を犯した……」
レイヴン「じゃあ、ブラックホープ号事件ってのは……」
パティは首を横に振る。
パティ「ああしなければ、彼らは苦しみ続けたのじゃ。今のおまえのように。あの事故で魔物化した人たちをサイファーは救ったのじゃ」
サイファー「だが、彼らを手に掛けた俺はこんな姿で今ものうのうと生きている……」
パティ「おまえはうちを助け逃がしてくれた。だから……今度はうちがおまえを助ける番なのじゃ、サイファー」
サイファー「アイフリード……俺をこの苦しみから解放してくれるというのか」
パティ「おまえにはずいぶん世話になった。荒くれ者の集まりだった海精の牙(セイレーンのキバ)をよく見守ってくれた。そして……うちをよく支えてくれたのじゃ。でも……ここで……終わりなのじゃ」
銃をサイファーに向けるパティ。
パティ「……くっ……」
リョウ『……パティ』
パティは悲しげな表情で、銃を撃てないでいる。
パティ「サイファーだけは……うちが……」
サイファー「つらい思いをさせて、すまぬな、アイフリード」
パティ「つらいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっとつらい想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはおまえのつらさの分を背負うのじゃ。おまえを苦しみから解放するため、おまえを……殺す」
サイファー「その決意を支えているのはそこにいる者たちか?そうか……記憶もなくし、一人で頼りない想いをしていないか、それだけが気がかりだったが。いい仲間に巡り会えたのだな。アイフリード。受け取れ、これを……」
パティの前に光り輝く紋章が現れる。
パティ「これは……マリス・ゲンマ……」
サイファー「これで、安心して死にゆける。さあ……やれ」
銃声があたりに響く。
パティ「バイバイ……」
海までもどってきたリョウたち。パティは幽霊船を見ながら、涙声で
パティ「サイファー……」
リタ「泣きたい時は泣けばいいのよ」
パティ「つらくても泣かないのじゃ。それがうちのモットーなのじゃ……!」
リョウ『パティ……』
パティ「うちは泣かないのじゃ、涙を見せたら、死んでいった大切な仲間に申し訳ないのじゃ。うちは海精の牙の首領、アイフリードなのじゃ。だから……泣かない……。……絶対、泣かない、泣きたく、ない……」
リタがそっとパティを抱き寄せる。リタの胸の中でパティは泣き崩れた。
To be continued