TOV 天を照らす銀河 最終章

□第71話 少女の正体
4ページ/4ページ

幽霊船 アーセルム号


幽霊船に乗り込んだリョウたち。

カロル「パティはアイフリードが隠した宝物を探してたんだよね。アイフリードに会って記憶を取り戻すために」

パティ「んじゃ」

カロル「で、見つけたのがその麗しの星……なんだよね?」

パティ「そうなんじゃが……ちょっと違うのじゃ。麗しの星はアイフリードが探してたお宝なのじゃ」

リタ「は?あんたが探してたものとじいさんが探してたものが同じってこと?それでじいさんに会えるの?」

パティ「麗しの星を使えば会える……それは間違いではないのじゃ」

突然、どこからか咆哮が聞こえてきた。

リョウ『な、なんだ?』

ユーリ「上だ!」

船長室の上に髑髏の騎士が立っていた。

リョウ『あの魔物は前に……』

パティは急に走り出した。

エステル「パティ!」

リョウ『俺たちも行こう!』

甲板に出たリョウたちの前に髑髏の騎士が現れた。

リタ「で、出たっ……!」

パティ「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」

カロル「サイファーって……アイフリードじゃなくて?」

レイヴン「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だわね、確か」

髑髏の騎士は浮き上がって上空に移動した。
パティは髑髏の騎士を追いかけてマストへ登る。

パティ「サイファー、長いこと待たせてすまなかった。記憶を失って時間がかかったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」

リョウ『記憶が戻っていたのか……』

髑髏の騎士「アイフリード……」

パティ「……!」

髑髏の騎士の身体から男性の幻が姿を現した。

サイファー「アイフリード、か……久しいな……」

カロル「アイフリードって、え?まさか……?」

パティ「アイフリードは……。うちのことじゃ!」

リョウ『どういうことだ……?』

パティ「サイファー、うちが分かるのか!?」

サイファー「ああ……だが、再び自我を失い、おまえに刃を向ける前にここを去れ」

パティ「……そういうわけにはいかないのじゃ。うちはおまえを解放しにきたのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」

サイファー「俺はあの事件で多くの人を手にかけ、罪を犯した……」

レイヴン「じゃあ、ブラックホープ号事件ってのは……」

パティは首を横に振る。

パティ「ああしなければ、彼らは苦しみ続けたのじゃ。今のおまえのように。あの事故で魔物化した人たちをサイファーは救ったのじゃ」

サイファー「だが、彼らを手に掛けた俺はこんな姿で今ものうのうと生きている……」

パティ「おまえはうちを助け逃がしてくれた。だから……今度はうちがおまえを助ける番なのじゃ、サイファー」

サイファー「アイフリード……俺をこの苦しみから解放してくれるというのか」

パティ「おまえにはずいぶん世話になった。荒くれ者の集まりだった海精の牙(セイレーンのキバ)をよく見守ってくれた。そして……うちをよく支えてくれたのじゃ。でも……ここで……終わりなのじゃ」

銃をサイファーに向けるパティ。

パティ「……くっ……」

リョウ『……パティ』

パティは悲しげな表情で、銃を撃てないでいる。

パティ「サイファーだけは……うちが……」

サイファー「つらい思いをさせて、すまぬな、アイフリード」

パティ「つらいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっとつらい想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはおまえのつらさの分を背負うのじゃ。おまえを苦しみから解放するため、おまえを……殺す」

サイファー「その決意を支えているのはそこにいる者たちか?そうか……記憶もなくし、一人で頼りない想いをしていないか、それだけが気がかりだったが。いい仲間に巡り会えたのだな。アイフリード。受け取れ、これを……」

パティの前に光り輝く紋章が現れる。

パティ「これは……マリス・ゲンマ……」

サイファー「これで、安心して死にゆける。さあ……やれ」

銃声があたりに響く。

パティ「バイバイ……」



海までもどってきたリョウたち。パティは幽霊船を見ながら、涙声で

パティ「サイファー……」

リタ「泣きたい時は泣けばいいのよ」

パティ「つらくても泣かないのじゃ。それがうちのモットーなのじゃ……!」

リョウ『パティ……』

パティ「うちは泣かないのじゃ、涙を見せたら、死んでいった大切な仲間に申し訳ないのじゃ。うちは海精の牙の首領、アイフリードなのじゃ。だから……泣かない……。……絶対、泣かない、泣きたく、ない……」

リタがそっとパティを抱き寄せる。リタの胸の中でパティは泣き崩れた。

To be continued


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ