鬼滅の刃 義手の屍

□第1話 邂逅
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時は大正。少年・竈門炭治郎は鬼殺隊に入隊するために、藤襲山で最終選別へ臨んでいた。


藤襲山・深夜


炭治郎(あと……2日だ……2日生き延びれば合格だ……)

何人かの鬼と戦って傷だらけになりながら炭治郎は歩いていた。
突然、炭治郎の影より大きな影が重なった。

炭治郎「!?」

すぐさま振り向くと、そこには炭治郎より長身の鬼が目の前にいた。
炭治郎はすぐに日輪刀を抜こうとしたが、

ズキッ

炭治郎「ぐあっ」

体に痛みが走り日輪刀が抜けなかった。
その間にも長身の鬼は右手の鋭い爪を炭治郎に向けて振り下ろそうとしていた。

避けようにも痛みで動けない炭治郎

炭治郎(ここまでなのか?ごめん禰豆子……鱗滝さん……)

炭治郎が死を覚悟した。その時

ドスッ

「ギャァァァ!」

なにかが飛んできて、鬼の頸の横にそのなにかが突き刺さった。

炭治郎「え?」

刺さっているものをよく見ると左腕だった。

炭治郎「な、なんで左腕が飛んで……?」

混乱しつつ、さらによく見るとその左腕は鉄のようなものでできており、左腕の肘から後は鉄線が伸びていた。

炭治郎「これは……義手?」

鬼の頸から義手が引き抜かれ、鉄線で巻き取られて移動していく。
その先にはひとりの少年がおり、左腕の肘と義手が結合した。

義手の少年『ちっ……頸を貫けなかったか……威力がまだまだだな……』

「ガァァァァ!」

邪魔された怒りなのか、鬼は叫びながら義手の少年に向かって走る。

義手の少年『食事の邪魔して悪かったな、これはそのお詫びだ!』

義手の少年は左の義手を鬼に向けて飛ばした。
しかし、先程の様に刺さることはなく鬼の頸の右側をかすめた。

炭治郎(外した!?このままじゃあの人が!)

義手の少年『位置よし、角度よし』

義手の少年と義手の間にはピンッと張りつめた鉄線がありその中に鬼がいる状態になった。
そのまま義手の少年は左腕を鬼の頸めがけて右に振った。

ザシュッ

鉄線が鬼の頸を通過する様に斬った。

「ギャァァァ」

鬼はそのまま塵となり消えた。

炭治郎(あれを狙ってわざと外したのか?すごい……)

炭治郎はただ呆然としていた。

義手の少年が炭治郎に近づいてきた。

義手の少年『おまえは逃げないのか?』

少し冷たい眼で炭治郎に質問してきた。

炭治郎「逃げる?なんでだ?」

義手の少年『オレはおまえを含めて何人かこの最終選別で助けた。でもこの左腕を見るや否や気味悪がってみんな逃げたんだよ』

炭治郎「逃げる訳ないだろう!命の恩人なのに。むしろ感謝しているよ!」

義手の少年『……そうか!そう言ってくれたのはおまえがはじめてだ!』

義手の少年は表情が明るくなった。

炭治郎「俺は竈門炭治郎。助けてくれて本当にありがとう。でもなんで鬼が死んだんだ?」

義手の少年『この義手と鉄線は日輪刀と同じ素材でできているんだ。これで頸を斬れば鬼は死ぬってことだ』

炭治郎「そうだったのか……」

義手の少年『そういえば、名乗ってなかったな。オレは歯廻螺旋だ。炭治郎、また会おうぜ』

炭治郎「ああ!お互い生き残ろう!」

義手の少年……歯廻螺旋は去っていった。

炭治郎(そういえば……)

炭治郎は螺旋のある違和感に気づいた。

それは……
























螺旋から生きている者の匂いがしなかった。


つづく
 

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