*空回りの運命線

□偽りの侍
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そう声をかけるとビクリと肩を揺らした
ドアの前に申し訳なさそうに俯くヤマテ君と警戒するように見る総悟と土方さんがいた



「ほら、入れ」

総悟がヤマテ君の背中を押して無理矢理病室の中へと入れた
ヤマテ君は一瞬 総悟を睨みつけたが、私を見るなり悲しい顔をして俯いた




『ヤマテ君…』


「あ、あの…
紅さん」

戸惑った様に喋るヤマテ君に私は、微笑んで頭を優しくなでた
ヤマテ君は目を見開きコチラを見つめた。

その目は涙目で、でも私の事をしっかりと見ていた





『もう いいよ
…大丈夫だから』

笑みをこぼすと、でも と言おうとしたが 口をつぐんだ
そして私は、総悟を見つめる
総悟は、分かった様にうなづいた




「土方さんこのガキをお願いしまさぁ」


「はぁ!?
なんで俺が!」

そう怒鳴り、私をチロリと見つめ、ため息を吐いた
そしてヤマテ君の背中に手を添えた




「帰るぞ」

ヤマテ君を率いて病室を出ようとした時、土方さんの足が止まりコチラを見た




「舞川








…なんでもねぇ」

意味が分からないでいる私を置いて土方は出て行った


あの人本当になんなんだろう



そんな事を思っていると、近藤さんが立ち上がった

「そんじゃあ、そろそろ行くか
ほら、ザキも帰るぞ」

「えっ!?えっ俺も!」

驚いた様に近藤さんを見つめるザキだが、近藤さんが耳元で何かを呟くと分かったかの様に立ち上がる


「紅おやすみ」

「おやすみなさい」

そう告げると、部屋から出て行った
総悟と二人だけの部屋はどこかさみしかった
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