*空回りの運命線

□偽りの侍
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激痛と共に血が溢れだした

私は、苦しみながら傷口をおさえる
ドクドクと心臓の鳴る音が聞こえる。でも私は立っていた
苦しいはずなのに 痛いはずなのに立っている




「あ…あっ おれ」

自分の真っ赤な手を見て正気を取り戻したヤマテ君は ガクリと地面に崩れ落ちる



「あ…あ

なんで なんで避けないんだよ!!
俺は本当は本当に刺すつもりなんか

それで同情したつもりかよ!!」

動揺した様に揺れる目で私を睨みつけた
さっきまでの殺気を放った目とは違い どこか焦っていた




『ヤマテ君に言いたい事がある』

私の言った言葉に何の返事を返さずに見つめる
私は少し間をあけて口を開いた





『私は、いや私達は…
護られるなんて概念なんて持ち合わせてない

私達は 護る事しか考えていないよ
私はただ総悟を護っているだけ
上司だからでも位が高い訳でもなく護りたいから
それは貴方のお兄さんにだって同じ
お兄さんは、護られるなんて甘い考えなんて…持ってないよ

貴方のお兄さんさんは…ずっとずっと身を削りながら私達仲間を護って…くれたの



いつもポケットに貴方の写真を入れて
一度だけ話した時に貴方の話しばっかしててね」


「兄ちゃんが」

悲しそうな顔をしながら、私を見るヤマテ君の頭を撫でた
だんだん立ってるのが辛くなって、喋るのも途切れ途切れになる



「その時に言ってたわ





“俺の大切な弟だ”って」


ニコリと微笑むと倒れた
ヤマテ君は駆け寄り私を揺すりながら名前を呼んだ
何回も何回も




『ヤマテ君…最後に一つだけ教えてあげる







心臓は左側だよ』

そう言って目を閉じた
最後に聞こえたのは必死に私の名前を呼ぶヤマテ君と


遠くの方で山崎の声が聞こえたような気がした
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