*空回りの運命線

□偽りの侍
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「な、何言ってるの?
紅さん少しおかしいよ

さっきからずっと暗い顔してさ」

苦笑いを浮かべ私を見るが、私は冷たい眼差しで彼を見つめた
その目にヤマテ君は 顔を歪める

二人だけの空き地には 蝉の鳴き声が響きわたった





『貴方は、私とあった時から ずっと嘘ついてたよね





ねぇ
夏風 ヤマテ君』

私が放った一言に、彼は大きく目を見開いた
その目は動揺を隠しきれずにユラユラと揺れていた




『本当は 真選組なんか憎いんでしょ?
憧れ 自分の夢 それは私を騙す上辺だけの言葉だったんだよね


そして 貴方は私達 真選組を抹殺しようとしている 違わない?』

私がそう言うと ヤマテ君はフルフルと肩を揺らしながら拳を硬く握った
そして 前髪からは 私を睨む様に見つめる二つの目が見えていた




「よく分かったね
隊長の背中を護っているだけあって馬鹿じゃないみたいだね

でもね。一つだけ違うよ




俺は真選組を抹殺したいんじゃない。お前を殺したいんだ」

そう言い放った瞬間、子供とは思えないほどの殺気が放たれる
さっきまで笑っていた顔とは思えないその表情に胸がドキリと脈打った




『私を殺したいのは、やっぱり貴方のお兄さん 夏風 ユウトが関わってるの?』

…夏風ユウト
一回だけ話した事がある四番隊の隊員。
弟の話を語る彼の顔はとても幸せそうだった

でも彼は一ヶ月前ほどの過激派攘夷志士のアジトに乗り込んだ時に戦死した




「…なんで

なんで俺の兄ちゃんを護ってくんなかったんだよ!!
なんで お前ばっか護られて 兄ちゃんは護られずに死んだんだよ!!

…隊長ばっか護って やっぱ位が上の人の方が護る価値があるもんな」

そう言うと懐の中に手を入れた

スッと抜き取って 舐めるように包丁を見つめた
ゴクリと私は生唾を飲み込んだ




「兄ちゃん
俺。約束かなえるよ

侍の約束。
悪い奴は殺さないとね」

ハハッと笑い私を睨みつけた
でも私は覚悟はできていた

彼は包丁片手に走りだした

私は、腰にぶら下げた刀にも避けようともせず 受け止めた
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