*空回りの運命線

□本当は優しい君
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『…んっ』
目をこすり起き上がった
目を開けた瞬間、朝日が目に差し込んだ
どうやら、俺はあの後 外で寝てしまっていたらしい

まだ5時くらいだろうか
空もまだ薄く明るく朝日もそう高くはのぼってはいない
俺は顔を洗うために、洗面所に向かった



バシャ
冷たい水を顔にかけ、まだハッキリとは起きてない目をさまさせる
すると…



「土方さん」

心臓が飛び上がった
この時間は、いつも誰も起きてないもんだから 急に聞こえたその声に驚きが隠しきれなかった


『あぁ…舞川か
今日は、やけにはやいな』
平然を保ちつつ、舞川を見つめた
でも、奴はそんな俺を無視し顔を洗う



「ねぇ土方さん。
このまま元に戻らなかったらどうします?
私は土方十四郎として
土方さんは舞川紅として生きて行く事になったら」

唐突に問いかけられ、俺は黙った

このまま舞川紅として…
鬼の副長から 第一隊隊長を護るものとして生きていく
そんなもん考えられねぇ


「昔の私なら、男になりたいと思ってたから今のままでいいと言ったと思う

でも、今は違う
昨日やっとわかったの
アンタはアンタなりの苦労があって、私には分からない
でも、私は私なりの苦労があって、アンタには分からない

だから、元に戻りたいと思った」

そう言って、本当に軽くでも優しく笑った
でも、俺は入れ替わって良かったと思ってる
コイツの視点になって考えられた
ずっと何かを抱えて生きてきたことも



『あぁ。
俺も戻りてェ 元の体に…
真選組の副長に』
そう言う奴はフッと笑って
俺をまっすぐ見つめた


「本当…


土方の体って嫌なんだよねー
隊員からはビクビクされるし、
あっ!でも山崎のビクビクした顔は可愛いかったなー
後で写真とろ」

奴はスキップして洗面所から出て行った
俺は顔を拭いたタオルをキツく握りしめ 目をひんむきながら その場に立ちつくした




…元の体戻ったら一発ぶん殴ってやる

そう心に誓いながら
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