*空回りの運命線

□綺麗な花火と君の香り
2ページ/4ページ





「…くん!
そう…くん!総一郎君!!」

急に大声が聞こえ、我にかえる
夢中で金魚をすくっていたせいか、旦那の声が聞こえていなかったらしい

そんな自分の状況を解説する俺とは訳違い旦那は慌てた様子で俺を見る



「…紅がゴミ捨てに行ったきり戻ってこねぇ」


…は?

さっきまで聞こえていた祭の賑やかな音も金魚が跳ねる音も聞こえない
ただ、その言葉を理解できなかった

“紅が戻ってこない”
そんな簡単な言葉なのに、頭が真っ白になって考えられない

アイツがいない?
アイツが消えた?
アイツが…



ガンッ


頬に激しい痛みがはしり、俺は目を丸くする。
俺の前には、硬い拳をつくり俺を見つめる旦那がいた



「俺…探しに行ってくる」
そう言い残すと旦那は走って人混みの中に消えてしまった
そんな旦那の後ろ姿を見つめた。




「何ボサッとしてるアルカ!?
惚れた女が、危険かもしれない時に尻餅ついてボーッとしてる男なんて考えられないアル

私、探しに行くアル
こんな時に動けないベビーは母親の乳でもしゃぶってな」
俺を睨み人混みの中に入っていった


「ーチッ
クソチャイナが…」

そう吐き捨て立ち上がった

…紅


“そうご”

またアンタは泣いているんですかい?
今も苦しい思いをしているんですかい?



“そうご”

もうあんな顔見たくねェ




“そうご





…たすけて”
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ