*空回りの運命線

□修学旅行は行く前が一番楽しい
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「よーし、
今から荷物を自分の部屋まで運んだら自主行動にしてくれ

ただし、六時半になったら宴会会場で飯にするから それまでには旅館に戻ってくる事」


秋風香り、澄んだ空気。
紅葉が彩る山の中に、大きな旅館。
どれも私の心を踊らせた
近藤さんがそう言い終わると同時に隊員達は我先にと旅館の中に入っていく。
よし、私も行こうかな。

そう思い荷物を持ち上げる





『うっ…意外に思いな』
どっしりと重さを感じるボストンバッグに顔が引きつる
これを前方20m先にある旅館に運び、私の部屋は三階、それも一番端。
これを そこまで運ぶとなると私
の腰と腕は崩壊的である






『はぁ』
大きなダメ息を吐き 歩き出す

重いし、背中痛いし、もう嫌だ。
服もう少し減らせば良かった
そう愚痴をはきながら、歩いていると







スッ









急に右手が軽くなる。
少しバランスを崩しながら、バックの行き先に目をやると




『兄さん』

兄さんは私の顔を赤い目でチロリと見ると歩き出した
結構重いはずなのに、顔の歪み一つなくスタスタと歩いていく



『あっ、ちょ終兄さん!

ありがとうございます』
慌ててその横に並びお礼を言う
兄さんの返事はなかったけど、彼は目線で返してきた



『いやーそれにしても、姫様も大胆ですよね
旅館貸し切りなんて』
そう一方的に話していると、前から声が聞こえた






「紅ー」
名前を呼びながら茶髪の男が近づいてくる。
総悟は、私の元まで近づくとまん丸の目を半分にして私を見た


「まだ外にいたんですかい?

他の隊員なんて荷物部屋に置いて旅館内探検してるとこでさぁ」

『えっ!?』
旅館内の探検私もやりたい!
そう山崎と一緒に
山崎のお風呂上がり早くみたいな〜
今日の服も可愛かったなー
髪の毛後ろで結んでさ!
そして夜には一緒にトランプのスピードやって
「もう、紅さん強いです!手加減してください!」
『山崎が弱いんだよ』

みたいな会話をして
そして、そして!




「おい。紅
自分の世界入ってるとこ悪いが 早く行かねぇと遊ぶ時間なくなるぜ




あ、終兄さん。そのバック貸してくだせぇ」

総悟が私のバックに手をかけ、受け取ろうとするが終兄さんは離さない
総悟もその行動に驚いた様で戸惑っている



「あの…兄さん?」
兄さんは、何か言いたげに総悟を見るとスタスタと歩き旅館に入っていった



「…」

『誰かの役にたちたいんじゃない?』
私達は、終兄さんの行動をあまり詮索せずに旅館に入った
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