*空回りの運命線

□約束
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薬のにおいがする病院の廊下を歩いていた。

外では もう8月が終わろうとしているのに蝉の鳴き声が響いていた

暑さも全く引く気配はなく、30度をこえる日々も多々あった。
病院に来るだけでも、汗ばみ シャツには汗が滲んだ

俺は、首元を緩めながら歩いていると俺の目的地の部屋が見えて来た
病室の前には何か起きない様に隊員を警備さしている。
俺が近づくと 隊員も気づいた様で敬礼をした



「おつかれー」
気持ちのこもってないダルい挨拶をして、病室のドアの取っ手に手をかけた
それと同時にドアが開く

病室の中から土方が出て来た
俺は、何も言わずに土方と入れ替わる様に病室に入った




紅は、ベットに乗り上半身だけは起き上がらせていた
彼女は、どこかさみしげな様子で正面を見つめていた



「紅」

俺が名前を呼ぶとコチラの存在に気づき、顔をパァーッと明るくさせた



『総悟!来てくれたんだ』

ニッコリと笑う彼女に近づき、近くにあった丸い椅子に腰をかけた


「どうですかい?
怪我の様子は」


『うん
だいぶ良くなってきたよ!

少し痛みがあるだけで、あとは大丈夫!
傷口が開かない様に安静にしてなきゃいけないんだけどね…』

紅はアハハッと苦笑い
を浮かべた。
彼女が入院して、一週間がたった
相変わらず暇な生活を俺は送っていた。
二日に一日しか会ってはいけないので、会えない一日が長く感じた。
その代わりに会っている時間は、とてつもなく速く感じる




「そういえば、
さっき土方と何話してたんですかい?」

俺が言った瞬間、あからさまに動揺しはじめた
目はキョロキョロと行き場を無くしたように動く




『な、なんでもないよ!』
目を合わせ、笑った

…嘘だ
俺じゃなくても、誰でも分かる。これは嘘だ

絶対土方に、何か言われた
でも俺は、そうですかいとそう言った
本当は、真実を聞きたかったが隠すのは俺に知られたくないから。
それを無理矢理聞くのは どうかと思う





「あっ、総悟

今度さ 休みもらって武州に帰らない?」

唐突な質問に俺は反応が遅くなる

武州?何しに
そう質問する前に紅は口を開いた



『ここ最近、忙しくてミツバ姉のお墓に行ってあげられてないじゃん?
だから、久しぶりに二人で行こう』

…二人で
俺はてっきり土方も誘うのかと思っていたが やっぱり紅も同じで姉上に会わせたくないのだろうか

それもあるのかもしれないが、コイツは土方の気持ちも考えているはずだ




「あぁ」
俺は短く返事を返した
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