短編集

□赤黒(krk)
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※wc誠凛優勝
※赤司君キャラブレれましたすみません




ブザービートが甲高く会場全体へと鳴り響く音を、聞いた。その途端に上がる歓声とチームメートの歓喜に満ちた声。洛山に…赤司君に、勝っ、た?イマイチ理解出来なくてグルリと会場を見渡してみる。コートの中で誠凛の皆が泣き笑いながら抱き合っていて、反対に洛山は唇を噛み締めて俯いていた。



「、勝った、」



呆然とその事実を呟いて立ち尽くしていれば、ゆっくりと歩み寄って来る赤が目に入って何故だか喉が震えた。



「あ、か…し、く」


「…負けたよ」



そう言った赤司君が少しだけ微笑んで、それからそっと目を閉じた。身じろぎすら出来ずにただ赤司君の姿を目に映していた。数秒そうして黙っていた赤司君は、ふっと短く息を吐き出してから僕の目を見た。



「今まで、悪かったー…黒子」



スッと僕の脇を通り去っていく赤司君。言いたいことは沢山あったはずなのに僕は呼び止めることが出来ないでその後ろ姿を見つめていた。振り向くことなく歩んで距離が出来ていく。
それは僕と赤司君の間にあった酷く頼りなくも確かに繋がっていた糸が切れる瞬間のようだった。
ああ、全て終わってしまった。きっと彼の完璧を壊してしまった僕は嫌われて、例え嫌われなくても好かれはしないだろう。
触れたいと僕が伸ばした手は彼の手と繋がることはきっともう無い。








と、そう思っていたのに、この現状は一体なんなのだろう。ベッドでスースーと規則正しい寝息をたてている赤司君を見つめながら考える。
あのWCが終わって、そのあとも大きな試合があれば顔を合わせはしていたけれど赤司君と個人的に連絡を取ることは無かった。
だから高校を卒業してしまえば疎遠になるだろうと少しばかりの痛みを抱えながら受験無事に乗り越えて一人暮らしを始めた訳であるのだけれど、何がどうしてそうなったのか、いつの間にか赤司君が転がり込んで来ていて今ではルームシェアなんてものをしている。正直、自分自身でも理解をしていない。



「…赤司君、起きて下さい」



ゆさゆさと布団の上から揺すって声をかけてみても、小さく唸るだけの赤司君に溜め息をつく。昔はいつ寝てるんだと思うくらいに合宿中は1番最後に寝て1番最初に起きていたというのに、一緒に住みはじめた赤司君は昔では考えられないくらい無防備だ。
いや、無防備というよりは自身についてだけ無頓着になったというのが正しい。僕が髪を乾かさないままいれば体調管理が云々と怒る癖に本人も濡れたままにしておいて次の日に咳をしていたりするし、本当に驚いたものだ。



「起きて下さいって、今日は一コマ目からなんでしょう君」


「ん…単位はたりる、理解も出来る、問題ないから休む」


「…ホント嫌みったらしい発言ですよそれ」


もぞもぞと更に深く潜り込んでいく赤司君に溜め息を隠すことなく吐き出して身体をまた揺らす。



「ほらダメですよ赤司君、起きましょう」



「んー…黒子、」



「なんですかっ、ぅわ?!」



突然にゅっと布団から出てきた手に首もとをホールドされて引っ張られたせいで赤司君の上へとダイブしてしまう。いきなりのことにバクバクと鳴る心臓をそのままに文句を言おうと目線を上に向ければ悪戯っ子みたいに笑う赤司君がいる。


「…危ないしビックリしたじゃないですか」



「それは悪いね」


「誠意が足りません」


「まあいいじゃないか。それよりもう少しだけ一緒に寝ようよ黒子」



スリ、と猫のように擦り寄って来る赤司君は少しばかり可愛いのだけれど僕がそう思っているのを知っていての行動だから性質が悪い。けれどまぁ皆の絶対であった面影を残しつつも、そうやって僕にだけ見せてくる甘えた部分に悪い気はしないのだから既にもう充分に毒されているのだけれど。


「ハァ…今日だけですよ、明日からは甘やかしません」


「そう出来るといいね」


「…今すぐ叩き出しますよ」


「それは困るかな、今日は黒子と一緒に居たいからね」


ふわりと僕を抱きしめてクスクスと笑った赤司君にもう反論する気は浮かばなくてグッと言葉を飲み込んで擦り寄れば嬉しそうに目を細めて瞼に口づけてくる。ああ、ホントに性質が悪い。けれどこれがあの日に僕が選んだ道の結果ならば仕方がないから最後まで面倒見てあげようじゃないですか。





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