短編集

□荒東(弱ペ)
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※キャラ迷子
※口調も迷子
※致してはないのでR18ではないですが、その直前なので注意
※801




好きだヨ、東堂のコト。


どうしてそんな流れになったのかも何の話をしていたのかも既にもうスッカリと忘れてしまったけれど、荒北に告白されたのは何てことなく普通に会話をしていた時だった。
挨拶のように告げられた好意は余りにもあっさりしていて確かに告白ではあったけれど告白に成り切れないもので、それと同じく俺の返事も明確だとは言えない。俺と荒北の交際も当然に不明瞭なスタートだった。


「ま、って、くれな…い、か、ぁ…荒北」



すぐ目の前にある荒北の顔に痛いくらい心臓が脈打って、息が苦しい。
離れたくても床に押し倒されてしまっているし、目をそらすことを許さないというかのように荒北の両腕が耳元に置かれているから身じろぎ一つ出来ないでいる。
どうしようもなくて、けれど、どうにかしたくてカラカラに渇いた喉で絞るように出した言葉は自分のものとは思えないくらい弱々しい。



「…嫌なのかヨ」


「っや、だとか。そうじゃ、なくて、あの…だな」



いくら不明瞭な始まりだったとは言え気持ちは本物であったから、一般的な男女カップルのように堂々ととはいかなかったが穏やかに交際してきたのだ。
手を繋いだことも抱き合ったこともキスだってしたから何時かはあると思っていた。だから嫌とかそんなことはない、けれど。



「…東堂」


「ぅ、いや、だからだな…」



言えとばかりに荒北に見つめられても、正直に言うにも勇気が必要なものだ。
言い淀んで視線をキョロキョロと泳がせていれば、暫く黙った荒北が何かを思い付いたように小さく「あ、」と零した。



「おまっ、俺が突っ込まれる方だとでも思ってたりしないよネ?!」


「違うに決まっているだろうバカ!」



てんで的外れな言葉につい先程までの緊張と羞恥を忘れて叫ぶように言葉を重ねる。



「ベタ惚れしているのは俺なんだぞ!」


「はぁ?!なに急にィ!」

「だからっ!荒北に、なっナニかされた、いと…か、あるし、想像だって…っ!」


「…っ、」


「…好きだから、変に…思われたら、とかっ、これで男同士に嫌悪したらとか…そういうの、が…だな…っあぁもう、嫌われたくないってことだ分かれ馬鹿もの!」


「…っ、あのさァ、自分でナニ言ってるか分かってンのォ?」


「…分かって、るに…決まってるだろう…」



俺の言葉に赤くなった荒北を見てこっちまで段々と羞恥心が振り返してきた、そのせいで語尾が掠れていく。恥ずかしくて恥ずかしくて言わなければ良かったと考えて、いたたまれなくて両手で顔を覆い隠す。
ああ、どうしよう、本当に恥ずかしいではないか。



「ぅー…っ」


「…ア゛ァ、もう、クソ!おい東堂!」


「っぅお?!」



恥ずかしいという言葉がグルグルして唸っていれば少し乱暴に腕を引っ張られ、突然のその行動に驚いて目を見開く。荒北に腕をガッチリ掴まれているせいで顔を隠す術をなくしているから自然と荒北と視線が交わる。


「ホーント普段はウザいくせに…こういうときばっかアレだネ、可愛い」


「うっ、ウザくはないな!」


「まぁ、そーいうウザいとこも含めて好きだけどネ」


ニッと意地悪くも優しく微笑む荒北は普段見慣れていないだけあって心臓に悪い。
狡いだろう、こんなときばかり普段は全く言葉にしてくれない好きだとか可愛いだとかを言うのも、普段の雑さなんて微塵も感じさせない程に優しく触れてくるのも。


「幻滅する訳ねーだろ、ずっとグッチャグチャにしてやりてーと思ってたんだからヨォ」



するり、と。
掴まれた腕を荒北のゴツゴツした手が撫でていく。


「おまえこそ嫌悪して泣いたって逃がしてやんねーからァ」


ベタ惚れしているのはこっちだ、と荒北が俺の腕に噛み付く。チリッとした痛みにビクリと身体を跳ねさせれば荒北が満足そうに目を細めた。


「あらきた、痛っ、い」


「全部くれヨ、なぁ、東堂」



ちゅ、と噛み付かれた場所に次は優しく口づけられて息が詰まった。
どうしてこの男はこんなにも俺を揺さぶるのが上手いのだろう。
これ程までに愛されていると知れば、もう。



「…荒北」



そっと名前を呼んで身を任せるように、目を閉じた。



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