雨唄(小説)

□雨唄 1
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…コツ…コツ

いつものように医務室に向かう。
これが俺の毎日の日課だった。
…でもこれで今日で終わりか…

ガチャ 

ドアを開ける。そこに眠っている彼は、今日という歓迎すべき日も知らずに眠り続けている。 3年間も…

「リヴァイ兵長。昨日、俺以外の巨人が絶滅しました。人類が勝利したんですよ!調査兵団の夢が叶いましたね。…そして…今日…

しっかりと彼に届いているかは分からないが話し続ける。冷たい何かが頬をつたう。

「き…今日、最後の巨人が殺されます!…それが人類の本当の勝利です…。」

声を詰まらせながら言う…。もう彼に目を向けることなど出来なくなって、窓の外を見た。

「…雨…ふってますね…。そういえば…あの時もこんな天気でしたね…。」

あの時…それは、俺達が…初めて…


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5年前
ペトラさんたちが死んですぐだった…。兵長の姿が見当たらないとおもったら、 雨の中で立っていた…一人で…。とても悲しそうだった…。兵長が泣いているわけではない。でも…その雨は…俺には兵長のこころのなみだのように思えた。兵長雨にぬれて、つめたそうだった。俺は兵長に傘をさし、兵長を抱きしめた。

「…!」

兵長は いつものように 俺は蹴り飛ばそうとしたが、その足を止めた。そして兵長の腕が俺の背中にまわってきた。信じられなかった。こんなふうに兵長に抱きしめられるなんて想像してなかった。
俺は…兵長の涙をぬぐってあげたい…そう思った。

俺は唇を兵長の唇に重ねた。
それは とても切なくて…とても甘かった…。

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ザーーーー
もうこんな時間か…もうすぐ…俺は…。
…ねえ、兵長。最後ぐらい起きてくださいよ。俺の最後を見届けてくださいよ。…そう言おうとおもったが、はばかられた。

「…兵長。『白雪姫』ってゆう話してますか?…毒で眠ってしまった姫が王子様のキスで目覚めるんですよ。」

そう告げると、俺は唇を重ねた。
兵長が起きますように祈って、俺の愛を重ねて。

でも無理だった。やはり無理だったか。そんな簡単に 物事が思い通りに動くわけがない。その時、ドアを叩く音がした。俺の死の予兆だ……。

「エレン イェーガー 処罰の時間だ。」

ああ。これでもう終わりか…。兵長とも、これであえなくなる。それなら最後にひとつだけ……

「兵長、俺のことは…わすれてくださいね。」

そう言って彼の額にキスを落とした。そして俺は…俺の墓場へ向かった。

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