*夢*

□影との出会い
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「あ?」


めんどくせぇ演習が終わり特等席に行くと先客がいた。



「……!」



艶のある黒髪と対照的な白の肌。


その瞳からはなにも読み取れずただ無表情で空を見上げていた。





闇光、名無しさん……



どうして彼女がここに?


っていうか俺どうすればいい?



必死に頭を働かせていると

不意に彼女がこちらに視線を移した。





「え、えっと…………」


えっと!?そのあと俺はなんて言うつもりだったんだよ!?

あああやべぇなにも思いつかねぇ!!



彼女は次の言葉を待っているのか視線をはずすことはなかった。




「……今日、いい天気だよな」



おぃぃぃぃぃ!?

なに言ってんだ俺!!

絶対引かれた!!絶対引かれた!!





「あなたも、空をみにきたの?」









へ?









「……えっと」

確かにそうなんだけど

確かに俺は空をみにきたんだけど

なんで彼女はそのことを知っているんだ?




「……違った?」





彼女は不安そうに俺を見つめる





「……いや、俺も、空、みにきたんだ






そういうと彼女は少し声のトーンをあげ、




「隣、座る?」




と聞いてきた。



「あぁ。」





彼女の隣はとても居心地がよかった



俺はいつも通り仰向けになると黙って空を見上げた。






しばらくすると彼女は俺のまねをするように仰向けになって空を見上げた。








俺たちの間に会話はなく、ただずっと空を見上げていた。




不意に彼女が口を開いた。






「あの、」






「?」




視線を彼女に移すとその距離は意外と近くて

慌てて視線を空に戻し。




「名前、教えてくれる?」




彼女の言葉は意外なもので。



アカデミーでも同じクラスだったし

存在くらい知られてると思っていたけど

どうもそうではなかったらしい。



「アカデミー、同じクラスだったよね?
ごめんなさい、全員の名前、覚えていないの…」



どうやら同じクラスだったということは知っていたらしい


彼女の声色は少し不安なものだった




「奈良シカマル。
俺ぁ奈良シカマルってんだ。
アンタは、闇光さんだろ?」



「……奈良、さん。
うん、私は闇光名無しさん」



名前を言われただけで体に熱が集まるのがわかる



「シカマル。」


「え?」



「奈良さんじゃなくて、シカマルでいいぜ。」








え?







俺なに言ってんだ!?




初めて名乗った奴にそんなこと言われたら絶対引くだろ!!






「シカマル…………さん」







そうじゃなかったぁぁぁ!?




「お、おう」






「私も、名無しさんでいい。」



え?




いいのか?





少なくとも彼女を名無しさんと呼んでいるのはナルトくらいだろう。






俺が何も言わないことを不思議に思ったのか




「あ、あの……?」






なんて顔を覗きこんでくる。








「名無しさん。」





何故だろうか


彼女の名前はまるでいつも呼んでいるかのように自然に声として現れた。







「シカマル、さんはよく此処に来るの?」




呼び慣れていないのか名前の後に「さん」とつけるのがくすぐったい。






「あぁ。此処、俺の特等席なんだ。
こーやって天気のいい日はいつも空を見上げてる。」








「私も、空を見ることが好きなの。」





好き、という言葉は自分に向かれていないことはわかっていても何故だかドキッとした。







「また、此処に来てもいい?」




「あぁ勿論。
此処には俺の親友の秋道チョウジってやつもたまに来るんだ。今度は3人で空、見ようぜ」




「秋道君、か……
わかった。時間がある日は此処にくるね。」


「おう。」



「それじゃあ、私そろそろ帰るね。」




気付けばもう夕方で、空は綺麗な橙色になっていた。




「っ名無しさん!!」




「?」





「また、な」






俺がそう言うと
決して笑顔ではなかったけれど、
彼女は心なしか微笑んで



「うん、また」




そう言うとその場から去っていった。
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