JOGIO
□兄貴がブチギレました
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プロシュートが、キレた。
場所はアジトのリビング。
その日その時、いい感じに酒のまわった面々は、下品な冗談を飛ばしたりオチのない笑い話をしたりしてはゲラゲラと腹を抱えていた。
もちろんプロシュートもそのひとりだったのだが、手のつけられない酔っ払いたちの話題がそのうちお決まりの話題――彼の前歯へとうつって、
「ンだよ、テメェのその前歯はよォ〜」
「あァん?ガキンチョは黙ってろ」
「ンだとゴラァツツ」
いつもなら引き際をわきまえている彼らも、流し込んだアルコールのぶんなかなかブレーキがかからない。
はじめこそプロシュートは余裕そうにあしらっていたが、ただひとり素面のわたしは、実はギアッチョの次ぐらいに沸点が低い彼のこめかみが痙攣しはじめていることに気づいた。
そこにきた、
「お前の兄貴……出っ歯…プッ」
というメローネか誰かのひとことで我らが兄貴の堪忍袋は完全に破裂、あろうことかグレフルを出しやがった。
「てめぇら全員“直触り”だァァッ」
なにをどれだけ飲んだのかはまったくもって不明。
ご乱心なのはたしか。
若干引き気味のグレフルが、関係ない奴らもろともギュゥゥンしていく。
未成年ゆえにひとりお行儀よくジュースをすすっていたわたしがグラスを空にしておかわりを探すあいだに、泣く子も黙る暗殺チームの若きギャングたちは町内会のおじいちゃんたちへと劇的にビフォーアフターしている。なんということでしょう。
低体温に定評のあるイルーゾォでさえ、酔って体が温まったせいだろうか順当に老化している。
「あーあ…」
死屍累々、とはこのことだろうか。死んでないけど。
荒い息とともに肩を上下させながら狼藉の跡をしばらく見ていたプロシュートは、なんの前触れもなく絨毯へとダイブした。
「あー……」
お世辞にも衛生的とは言いがたい床に、9人の男たちがなかよく雑魚寝している。
彼らがつくりだしたゴミと食べ残しの山を視界から締めだしてよっこらせと立ち上がり、これからとりかかる労働に気合を入れるべくシャワールームへと向かった。
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