×寒い夜は二人で。



寂れた村にたどり着いたのは日もすっかり落ちきった後で。泊まる宿もないどころか軍の犬だと罵られた挙句この寒空。寒さなどわからない自分でも、枯れた草花や周りの人の服装を見ればわかる。

「ねぇ、本当にここに泊まるつもり?」
「しょーがねーだろ、」

そう悪態を吐くと冷たい鎧に寄り添い、丸くなる。猫のような兄の下にはお情け程度の牧草。これすらも軍の犬ではない僕が貰いに行った。

兄は「お前の方が」と言うが。自ら針山に座る姿は心が痛い。そしてそれと同時にこの冷たい身体に寄り添う兄がどうしようもなく愛おしい。

これは兄弟としての気持ちなのか、それとも。

「兄さん・・・?」

右の方からカシャリ、と音がして見てみると放っておいた手の中指を兄の右手が握っていた。
お互い無機質なそれが絡まったところで温もりなど生まれないのに。

「ちゃんと寝ないと。」
「こっちの手なら文句ないだろ?」

まるでこっちの言葉を待っていたように即答されて、なにも言えなくなってしまう。
つい右手を握ると、今度は兄の方から疑問の声が投げられた。

「たまには、いいよね」

「たまにはな。」

「ねぇ、兄さん・・・」

「なんだよ、」

「・・・明日は宿がとれるといいね」

「そうだな・・・」

でも、こうやって寄り添って過ごす夜が。

またくればいいな。

それを見透かすようにギュッと右手が握り返されたことは、感覚のない自分にはわからなかったけれど。

おやすみ、と言った兄さんの声がすごく優しかったから。僕はそれで満足していたんだ。




次ぺーじに続きます( ´`)
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