K〜with the king of red
□四
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今日は休日ーーといっても私からしたら毎日が休日の様なものだけど。
私達は街に買い物に来ていた。
メンバーは私と十束さん、アンナ、そして周防さん。
私の数歩前をまるで親子の様に手を繋いでる十束さんとアンナは問題無いと思う。
ちら、と隣を歩く周防さんを見ると 不機嫌オーラが滲み出ている。
何故こんな状況なのかと言うと、一時間程前、ホムラでのやりとりを思い出す。
*
「今日は買い物に行こうよ」
ソファーに座っていたら隣に腰を掛けた十束さんが急にそんな事を言った。首を傾げていると、
「名無しさんってせっかく可愛い顔してるのに服が女の子らしくないというか。もっと君に似合う服ってあると思うんだ」
そう言われて自分の体を見下ろすとTシャツにジーパンという、まぁ確かに女らしからぬ格好だった。ファッションの事はあまりよく分からないし、私が着るのはこの服と周防さんのおさがりのTシャツくらい。
これはこれで不便はしていないのだけど、と思っていると草薙さんも
「それはええなぁ。行ってき」
と賛成されてしまった。アンナにも 行こう、と服を掴まれ 断る事はできない。
「決まりだね。じゃあ早速行こうか」
多分、ここまでは普通。十束さんにアンナと私がついて行こうとした時、
「ほら、キングも早く」
「…は?」
煙草を吸っていた周防さんに十束さんが声をかけた。
「は?じゃないよ。キングも行かなきゃ」
「勝手に行って来い」
「何言ってるのさ。ただでさえ今日は休日で気の浮いた奴が多いのに、名無しさんが変な男に絡まれる可能性が高いだろ。ボディーガード兼荷物持ちだよ」
絡まれたら自負で追い払えるし 荷物も自分で持つから、という意味を込めて十束さんの袖を引っ張り首を横に振ったが、十束さんはにこにこしているだけ。
周防さんは黙っていたけど、大きくため息をつき渋々と立ち上がった。
*
そんなこんなで今に至る。
「どんな服が好き?俺としてはワンピースとか似合うと思うんだけど」
強いて言えば動きやすい服なのだが、それを言えば今日買い物に来た意味もなくなりそうだった。ショーウィンドウに飾られた服をぼんやりと眺めるものの、いまいちピンとこない。
「タタラ、あっちクレープ屋さんがある」
くいくいと十束さんの手を引っ張るアンナが指す方には、広場にクレープの出店があった。
『皆さんはあそこで休んでて下さい。その間に服買って来ます』