Dream
□泣き虫
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ふふふふーん♪
今日の私は最高にテンションが高い!
なんてったって、これから彼氏に手作りのクッキーをあげるんだから!
私は器用な方ではない。
調理実習は今まで何回もあったけど、失敗してばかりだった。
だけど今日は違う。
なんと、大成功したのです!
はい!拍手!!!!←
だからね、大好きな大好きな彼氏の岩ちゃんにこれから渡しに行くのです!
そんな事を考えているうちにもう体育館に到着!
「岩ちゃんはいますかー?」
るんるんな私の声が体育館に響く。
「あ!名前じゃん!もしかして・・・俺に会いに来てくれたの!?」
ニコニコ笑顔の主将、及川くんが走ってきた。
「・・・岩ちゃんはいますかー?(ニコニコ)」
「無視!?酷いっ!」
泣きそうな顔の及川くん。まったく、岩ちゃんの男前を見習って欲しいよ・・・。
「ねぇー!い・わ・ちゃんはどこっ!?」
「・・・名前は本当に岩ちゃんが好きなんだね。」
流石及川くん!分かってるぅ↑↑
「うん!大好きです!で、どこ!?」
「そんな風に好かれてる岩ちゃんが羨ましい限りだよ・・・。岩ちゃんは委員会で遅れてくるって言ってたけど、もうすぐ来るんじゃないかな?」
恨めしそうな顔でこっちを見ないで。及川くん。君にもいつか素敵な彼女が・・・。
・・・できなそう笑(ごめんなさい)
「今失礼な事考えてたでしょー。」
「そ、そんなことないよっ!」
危ない危ない悟られる所だった。
「それより、岩ちゃんに何の用事なの?いつもは部活の邪魔したくないからってこないよね?」
「・・・ふっふっ!よくぞ聞いてくれま「危ないっ!!!」
ぐしゃっ!
いきなりのことで分からなかった。
痛いところは幸いにもない。
「大丈夫!?顔面にボールが当たったように見えたんだけど!?」
あぁ。ボールが飛んできたのかぁ。
顔面?痛くはな・・・
「あ!!!!」
痛くないはずだ。
私は反射的に持っていたものを盾にしたのだから。
「あのさ、その手に持ってるの岩ちゃんに渡す奴?」
青ざめた顔で聞いてくる及川くん。
私の顔も青ざめてるよ・・・。
どうしよう。どうしよう!
そんな時背後から大好きな声がした。
「おーい。どうした?ん?名前?」
体育館にはあまり姿を見せない私がいることに驚いている岩ちゃん。
すっごく会いたかったのに。
会えて嬉しいのに。
やだ。会いたくない。
「ごめんっ!及川くん。岩ちゃん。私帰る!」
最悪だ。こんなはずじゃなかったのに。
岩ちゃんに大成功したクッキーを渡して、美味しいって言って欲しかっただけなのに。
泣いたら余計惨めな気持ちになるのは分かっていたけど、涙が止まらない。
「おいっ!待てよ!」
不意にぐいっと腕をつかまれた。
今、一番会いたくない人。
「及川から事情は大体聞いた。ケガとかしてねぇのか?」
「・・・大丈夫。」
岩ちゃんは優しい。とても。
「良かった。」
優しい眼差しで、私の頭をポンポンしてくれる。
でも、私は納得できなかった。
「でも、でも!岩ちゃんに渡すクッキーを盾にしちゃったんだよ!渡せ、ない。初めて成功したっ、のっに・・・。」
ボロボロ涙がこぼれてきて上手く話せない。
ガサガサッ
岩ちゃんが私の手からくしゃくしゃの紙袋を奪い取った。
「やだっ!粉々…。」
取ろうとしても岩ちゃんの背が高くて届かない。
無言で袋からクッキーを取り出して食べ始める。
想像通りかなり砕けていた。
「…美味い。ありがとな。」
ニカっと笑う岩ちゃん。
「ぐちゃぐちゃなのに?岩ちゃんにはちゃんとしたの渡したかったのに…。」
きょとんとする目。
「見た目と味は比例しねぇよ。ちゃんと美味しかった。名前が作ってくれるなら俺は何でも食ってやる!また作ってくれよ。」
真っ直ぐな目。
岩ちゃんこんなセリフも言えちゃうんだ。素敵だ…。
「うぅ…岩ちゃん…大好き。私またちゃんとしたの作ってくるね。
今度はボールが来ようが槍が降ろうが守ってみせるね…!」
「おい!それは自分を守れ!俺が許さねぇ!」
「えへへ…。」
今度はなんだか嬉しくて涙が出てきた。
「…!?なんでまた泣くんだよ!やっぱどっかけがしたか!?」
アタフタしだす岩ちゃん。
「ち、違うよっ!嬉し涙!」
「///」
気付けばギュッと抱きしめられてて。
「バーカ。泣くんじゃねぇ。」
ぶっきら棒な岩ちゃんの声が耳元で聞こえた。