あつみな
□あつみな短編
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『ねぇ、にゃーちゃん見せて!』
大好きなみんなが開いてくれた、誕生日パーティーの帰り。
敦子が久々にうちに遊びに来た。
「やーん!かわゆい〜プニプニ〜♪」
うちに来ると、早速敦子はソファでスヤスヤと寝ていたにゃーちゃんと遊び始めた。
最初こそ、眠りを妨げられ不機嫌な様子を見せていたにゃーちゃんも今ではすっかり敦子の虜だ。
お腹を見せてグルグルと気持ち良さそうにお腹をさすってもらっている。
にゃーちゃんを見る、相変わらずの敦子のくしゃっと笑う可愛らしい笑顔。
敦子の笑顔は、人でなくネコまでも虜にしてしまうのだろうか。
「敦子〜コーヒー淹れたよ」
「ねぇねぇたかみな!ここ触るとにゃーちゃん気持ち良いみたい!」
相変わらずのマイペースぶりだ。
何かに夢中になると、人の話なんててんで聞かないんだから。
それでも、なぜだか敦子は許せてしまう。
敦子の笑顔は無敵だ。
私は楽しそうな敦子の笑顔に微笑むと、コーヒーをテーブルの上に置いてソファににゃーちゃんと一緒に寝転んでいる敦子の隣へ移動した。
「ほら、ここも触ってもらうの大好きなんだよ、にゃーちゃん」
寝転んだにゃーちゃんの首筋を撫でると、さらに気持ち良さそうににゃーちゃんは鳴く。
「あはは、ほんとだ!」
「うりうり〜♪」
しばらく、私と敦子はにゃーを撫でて遊んだ。
しばらくすると、にゃーは遊び疲れたのか再び尻尾を丸めて寝てしまった。
私と敦子は顔を見合わせて笑い合うと、にゃーを起こさないように静かにソファから体勢を起こして、ソファの近くのテーブルへ移動した。
テーブルの上には、すっかり冷めたコーヒーが置いてある。
すっかり、コーヒーの存在を忘れてしまっていた。
「コーヒー、淹れ直そうか」
私が再び立ち上がろうとすると、敦子はフルフルと首を振った。
「冷めちゃったよ?」
「いいの。それよりたかみな。こっち来て?」
敦子はチョンチョン、と隣を指差す。
向かい合って座っていた私は、敦子の隣へ移動して再びカーペットに腰を下ろす。
私が腰を下ろした途端、敦子はガバっと私に抱きついて来た。
「わわわ!」
「へへっ」
急に抱きつかれた私は、そのままカーペットに倒れこんでしまう。
敦子はそんな私の胸の上で嬉しそうにゴロゴロとジャレてくる。
まるで、ネコみたいだ。
「にゃーちゃんは寝ちゃったけどぉ〜...まだ、たかみなに遊んで欲しいネコがここにもいるんだけどな♪」
私はプッと吹き出してしまう。
「ネコって、敦子のこと?」
「にゃーん♪」
「プーっ!にゃーんって!」
ネコの鳴き真似までする敦子が可愛くて可笑しくて、私は笑いながら敦子の背中に手を回して敦子の髪の毛を撫でてあげた。
久しぶりだった。
こんなに近くに、敦子の温もりを感じるのは。
....ずっと続けばいいのに、なんて願いにも似た思いが胸をよぎる。
「ねぇ、たかみな」
「んー?」
「今夜は、たくさんお話ししよ?」
「うん!」
「....このままで。ね、いいでしょ?」
敦子が、私から体を起こすとジッと私の顔を覗き込む。
敦子の大きな黒い瞳の奥に、私は自分と同じ思いを見た気がした。
敦子も、この時間が続けばいいのにって思ってるんだ。
「....うん。おいで、敦子」
私が笑うと、敦子は嬉しそうに笑って再び首筋に抱きついてきた。
その日、私は久々に夜更かしをした。
愛しい、愛しい。
もうひとりの、ネコと。
END.