問題児たちと一緒に決闘者が来るそうですよ?

□プロローグ
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鈍色の雲が空を覆い、毎日の様に大粒、小粒問わず数多くの雫が地上に降り注ぐ。

「はぁ……」

そんな曇天の空を傘越しに見やり、ため息を一つ零す。

14〜5歳程度の少年が、薄紫色の結んだ髪を一房後ろに垂らし、それを左右にゆらゆらと揺らしながら、何をするでもなく、ぼんやりと空を眺めながら、歩き慣れた誰もいない自宅への道をゆったりとした速度で歩を進める。

『ギャゥ〜♪』

『わーい、雨だ雨だー♪
もっと降れ〜♪』

視界の端で雨の中を心底楽しそうやはしゃぎ、踊り狂っている爬虫類族の小さなモンスター『ギゴバイト』とスカイブルーの髪の少女『水霊使い エリア』を見やり、少年…『結月(ユヅキ)縁(エニシ)』は、再び小さなため息を零した。












広々とした自宅のリビングに腰を下ろし、カバンの中からデュエルディスクを取り出し、カード一枚一枚に目を通していく。

一通りチェックを終え、再びデッキをデュエルディスクにセットし、机の上に置かれたあるものに視線を送る。

先程まで雑多に並んでいた食器の代わりに鎮座している一枚の封筒

封筒にははっきりと『結月縁様』と書かれていた。

「差出人の名前もなし、というか俺に手紙を送って来るような知り合いなんて居ないし…」

あれこれと考えたが、どう考えても答えが出ることはなかった。



小一時間悩み抜いた結果、「俺宛に届いたんだから一度開けてみよう」という結論にいたり、再びリビングの中央に腰を下ろし、封筒の封を切った。

開けた封筒の中には一枚の手紙。
その手紙にはこう書いてあった。

『悩み多し異才をもつ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの≪箱庭≫に来られたし』

「…はぁ」
馬鹿馬鹿しい。
誰かのいたずらだろう。

だがもし……


そんな考えを振り払うかのように頭をふり、手近に置いていた10以上のデッキと100以上のカードの入った大きなショルダーバッグを肩にかけ、自室へ足を向け、足を踏み出した。

刹那、突如視界が開け、はるか上空に投げ出されていた。
 

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