インフルエンザ・・・(完結)
□第3話
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それから、数日間、僕達の仕事は喜矢武さんが居なくてもできる仕事のみとなり、スケジュール的にも楽なものが多かった。
毎日、仕事を終えるとその足で喜矢武さんの家へ向かい、看病していた。
もちろん、所さんには内緒にしている。
日を追う毎に喜矢武さんの体調も回復して、部屋をウロウロしたり、自分で冷蔵庫まで歩いたりできるようになっていた。
明日、病院に行ってインフルエンザの菌が確認されなければ、晴れて完治した事になる。
僕も、看病につきっきりで仕事がたまっていた。
どうしても先延ばしにできない仕事があり、喜矢武さんの家にノートパソコンを持ち込み、仕事をしていた。
喜矢武さんは相変わらず、ベッドに横になりながら、携帯をいじっている。
僕は、その隣の部屋で仕事をしていた。
仕事も終盤に差し掛かり、何となく冷蔵庫に向かう。
喜矢武さんがいつも飲んでいるビールが目にとまる。
こっそり、1本拝借して、プシュッと開ける。
喜「どろぼー」
寝室から喜矢武さんの声が聞こえる。
鬼「豊…起きてたの?」
喜「あー、俺も飲みたい…」
鬼「明日まで我慢だよ。」
そう言うと、ふてくされたように布団にもぐる音が聞こえた。
それから、しばらくして目を覚ました喜矢武さんが、起きてきた。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、僕の隣に座った。
喜「おい!ビール1本だと思ったら2本飲んだのかよ!どろぼー!」
何だか、元気な喜矢武さんは久しぶりだ。
嬉しくなって自然と笑みがこぼれた。
喜「なぁ…」
そういうと、喜矢武さんはポツリポツリと話し始めた。
喜「俺さ、わかったんだ。やっぱ…俺…お前の事好きだわ…」
パソコンで作業しながら聞いていた僕の指が止まった。
驚いて喜矢武さんを見ると、優しい顔をしていた。
喜「俺ら、付き合ってるわけじゃないじゃん?でも、こうやっていつも一緒にいるじゃん…俺はお前の存在に甘えてたんだ。でも、やっとわかった。大事にしたいのも、風邪ひいた時に看病してもらいたいのも、LINEしたいのも、一緒に居たいのもお前なんだよ。だから…正式に俺と付き合ってほしい…」
喜矢武さんからの告白に驚いた僕は、何も言い返す事ができなかった。
喜「返事は後でいいよ…俺寝るから」
そういって、喜矢武さんは立ち上がると寝室へ向かった。
鬼「わざわざ返事聞く必要あるの?」
喜矢武さんは、驚いた顔で振り返った。
鬼「好きじゃなきゃ看病しないし、LINEもしない。一緒に居たいから毎日看病したんだ。豊がインフルエンザになって毎日一緒に居れて不謹慎だけど、嬉しかった。それに…」
僕が言い終わらないうちに、抱きしめられた。
喜矢武さんの腕にすっぽり抱かれて僕は少し泣いた。
喜「わかった。じゃぁ今から俺ら、恋人同士な」
僕は、小さくうなずいて、また喜矢武さんの胸に顔をうずめた。
喜「俺、インフルだぞww」
バッとお互い離れると顔を見合わせて笑った。
翌日、喜矢武さんの病院に付き添い、無事に完治が確認された。
完治したとわかって、すぐに所さんに連絡を入れると、スケジュールの調整が始まった。
病院からの帰り道。
鬼「豊の部屋に荷物置きっぱなしだ。このまま、寄ってもいい?」
喜「ん?なんならこのまま一緒に住んじゃう?(ニカッ)」
鬼「考えておきます(^^)」
喜「それ、絶対住まない返事じゃん!!」
鬼「そんな事よりさ、まだ昼だけど飲みに行かない?」
喜「お!いいねぇ!!」
僕たちの距離を近づけてくれた、きっかけをくれたインフルエンザ。
ちょっとだけ、感謝しつつ、僕たちは歩き始めた。
これからもずっと一緒にいれますように…