翔と豊
□第15話
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【翔と豊N】
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(豊Side)
淳くんと研二を無事に結びつけた俺たちは、平和な日々を送っていた。
ケンカもないし、かと言ってラブラブってほどでもない…。
もうすぐ、翔と付き合って2ヶ月。
俺としては、そろそろ次の段階へ進みたい。
まだキスしかしてないし…。
でも、翔はかなり怖がっているみたいだ。
そりゃ男同士だもんな。
俺だって怖いよ。
ぶっちゃけ、何をどうすればいいかなんてわかんないし。
でも、翔の事好きだし、翔以外は考えられない。
翔も同じ気持ちだろうか…。
収録を終えて、片づけをしてる途中、思い切って誘ってみた。
豊「なぁ…今日、俺んち来ない?」
翔「え?」
翔は一瞬で俺の考えてる事がわかったみたいだ。
すごく悩んでいる顔をした。
翔「あ…えと…今日は家で作業があって…」
豊「そっか…わかった」
翔にはまだその気は無いみたいだ。
何だか、少しショックを受けてしまった。
帰り際、楽屋の出口で袖を引っ張られた。
翔「豊…あの…本当は作業ってのは嘘なんだ。あの…行ったらそうゆう雰囲気になるんじゃないかって思って…怖くて…」
翔は今にも泣きそうだ。
俺はこんな顔をさせたいんじゃないのに。
豊「何もしないって約束する。ウチに来る?てか来いよ」
翔「うん!」
これでいいんだ。
俺は、翔とヤリたくて付き合ってるんじゃない。
翔の気持ちを無視する事だけはしたくない。
俺たちは、急いで帰り自宅を済ませ、俺の家へ向かった。
途中でコンビニに寄って、ビールやつまみを買い込む。
こうゆう時は、やっぱり男同士だって感じる。
つまみのチョイスがオヤジだ。
それにしても…何とかなんないのかよ。
いちいち、つまみ見ながら「わぁ…」とか「ふむ」とか言うの。
可愛すぎるだろ!!
買い物を済ませ、荷物を俺に預け、翔は数歩先をトコトコ歩く。
いつにも増して今日の翔は可愛い。
あれ?俺ってこんなにホレてたんだな…。
俺の部屋に着いて、すぐに飲み会が始まる。
酒が入ると、翔はすぐ仕事の話になる。
俺は黙って、聞いている。
翔の頭の中は95%はバンドの事だ。
残り5%がプライベートで、俺はその中にいる。
でも、それでいいんだ。
翔にとっては、それが一番バランスがいいんだろう。
翔の隣に座って、翔の話を聞いて…それで翔が落ち着くならそれでいい。
ふいに、隣に座っている翔の腰に手を回した。
翔は、ビクッと驚いて、
翔「な、何もしないって言ったじゃん!」
豊「え?これもダメなの??」
翔「いや…ダメじゃないけど…」
豊「これ以上は何もしないから安心して」
翔「あ…これ以上って事はキスもしないの?」
何で、そんな顔して見るんだよ…。
俺だって我慢してるんだ…。
キスしたらそれ以上の事したくなるだろ…。
豊「我慢できるかわかんないから、キスしない」
翔「そっか…」
少し寂しそうな顔をして、ちびちびとビールを飲み始めた。
これで良いんだ…。
まだ早いまだ早いまだ早い。
翔「キスしたかったなぁ…なんちゃって(^-^)へへ」
小さい声で、翔はつぶやいた。
テーブルのビールが倒れて残りわずかのビールがこぼれた。
豊「どうなっても知らねぇからな…」
俺は、翔にキスをした。