長文

□ドライブ(鬼×喜)
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【ドライブ】


今日は、久しぶりのオフ。
夜型のあいつを無理矢理12時に寝かせ、早起きさせた。


何となく数日前から、翔とドライブに行きたくてウズウズしていた。
天気予報をチェックしたら、今日まさに快晴の予報。


これは、行くしかないだろ!!と翔を無理矢理連れてきた。


最近、ツアーの準備やらで、事務所に缶詰状態だったあいつは、精神的に不安定になっていた。
どうにか、気分転換して欲しくて、連れてきたのだ。


助手席のあいつは、「なんでこんな早くにー」とかブツブツ言っていたけど、聞こえないフリをした。
気がつくと、あいつは助手席で小さな寝息を立てていた。


どうせ、12時には寝れなくて朝方まで作業していたんだろう。
それでも、寝坊しないで、準備して待っていてくれた。


そんな、翔を急に愛おしく思って、信号待ちで止まった時に、そっと翔の髪に触れた。


豊「眠いのに…疲れてるのに…ごめんな…」


小さくつぶやくと、むにゃむにゃと寝息をたてた。
ヤバイ…可愛い…
指に触れたくて、頬にふれたくてウズウズしていた時、信号が青に変わった。


長いトンネルを抜けて、視界が明るくなる。
その先には、真っ青な海。
一瞬でテンションが上がった。


いつの間にか、翔も目を覚まし、子供の様に窓にはりついて海をながめている。
少し寝たからかすごく元気だった。


海へ着く手前のコンビニへ立ち寄り、飲み物や食べ物を買い込んだ。
快晴の上に、風もほとんど無いから、砂浜でゴハンを済ませることにした。


コンビニでの買い物を済ませ、海の近くの駐車場に車を停めた。
海を見下ろす感じのその駐車場は平日という事とまだ3月という事もあり、ほとんど車は停まっていなかった。
俺は、タバコに火をつけて、車から降りる。
続けて翔も車を降りた。


砂浜への階段を下りる。
翔は俺の少し前をはりきって下りていく。


砂浜にあったベンチに腰を下ろす。
お腹が空いていた俺たちはすぐに、コンビニで買ったお菓子や飲み物を食べた。
翔も、パンをむしゃむしゃ食べている。


お腹も満たされて、のんびりとした空気になる。
波の音と、時々聞こえる翔の鼻歌。
何の曲かわからない程、小さな声で。


俺ものんびり砂浜を散歩したり、ゆっくり過ごした。
気がつくと、砂浜を歩いている俺の隣を翔が歩いていた。


翔「今日さ、わざわざ僕の為に海に連れてきてくれたんでしょ?」


いきなり言われて、何も言い返せなかった。


翔「最近、忙しくてすごくイライラしたり、逃げたくなったりしてて…」


俺は、そっと翔の手を握った。
外では、こうゆうスキンシップはしないつもりだった。
だけど、今は翔が繋ぎたがってる気がした。


翔「でも…みんなが居るから…豊が居るから…」


今にも泣きそうな顔の翔をただ見つめる事しかできなかった。
俺は握った手に少しだけチカラを込めて、


豊「全部、知ってる。最近不安定なのも…全部。」


豊「でも、お前のために海に来た訳じゃないよ。お前の笑ってる顔が見たいから海に連れてきた。自分のため。」


翔はニッコリ笑って、目標達成できて良かったね…と言った。
つられて俺も笑った。


豊「何か、イチャイチャしたくなってきたから、そろそろ帰るか!!」


珍しく、そうだね…とあいつは微笑んで駐車場へ走り出した。


翔「負けた方が帰りの運転ね!!」


豊「は?絶対負けねぇ…!!」


急いで、翔の後を追いかける。
翔は、満面の笑顔で走っている。
まるで、子供みたいに。


まぁ、俺は負ける気まんまんだけどね。


〜おわり〜

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