忍たま

新芽
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 春

新たな門出
希望があふれていた





新芽






(…やっと、終わった)



 学園長の長い話が終わり、今春入学した1年生たちは各担任の指示でい、ろ、は組に分かれて教室に向かった。



「たーきーやーしゃーまーるー」
「滝・夜・叉・丸ッ!」


 1年い組、綾部喜八郎。私の同室になる男らしい。…途中で退学しなければ、六年間。



「あのねー、この子」
「ああ?」

「たむらみきえもんー」
「…は?」

「なんかー、ろ組の子にいじめられてたー」
「……、」



 綾部の後ろに隠れるようにしていたのは、田村三木ヱ門、と、いうらしい男。
 髪と瞳の色素が異様に薄く、目に至っては赤に近い。


「…平滝夜叉丸だ」
「あ、え、…田村…、三木ヱ門、です」

「……いじいじと…、男らしくないな」
「ご、ごめんなさい…、」


 …調子が狂う。
きっとろ組にいじめられていたというのはこの髪と瞳のせいだろう。

…多少、性格のせいかもしれないが。



「…一緒に来い。行くぞ」
「、う、うんっ」


 一瞬、とてもうれしそうな顔をした。
なかなか、可愛らしい顔じゃないか。



 校舎に入る寸前、頭上から視線を感じた。



「?」


 見上げると、三年生が3人、私たちを見下ろしていた。


「っ!」


 その中の一人、私をじっと見ている先輩がいた。
 

(…、な、なんで、)


 少しうろたえたが、先輩であるから、そっとお辞儀をした。



「なにしてんのー、たきー」
「あ、待て」


 先に行ってしまった綾部と田村に追い付くべく少し足早に歩き、並んだところで話した。


「上で先輩が見ていた」
「えっ、なんでー。私もみたい」


 たたた、と綾部が元来た道を戻った。
手をつないだ田村も慌てて戻った。


「あ、おいちょっと!」


 私も急いで引き返し、もう1度見上げた。
すると、さきほどいた先輩がいなかった。


「早く行くぞ!迅速にと言われたろう!」


 ぐいぐいと田村の背を押して、ようやく中に入った。綾部がいまだに上を見上げていた。


「っ、綾部!」
「あ、はあ〜い」



 私の声に綾部は慌てて私たちの元へ走ってきた。




(…あの先輩は、何というのだろう)




 私の胸は、不思議とドキドキとしていた。





→三木

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