one piece
□pillowtalk
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「もし」
ドフラミンゴがぽつりと呟いた声に、
クロコダイルは自分の隣で寝転ぶドフラミンゴの横顔を見た。
「もし、おれがお前をすきだと言ったら、」
「おれのものになるか、お前」
天井を見ながら呟かれたそれは、ひとり言のような気がして、クロコダイルは何も答えずにいた。
すると、ドフラミンゴから返事を急かすような視線がちらりと寄こされた。ひとり言ではないのか。
クロコダイルは、ぱちりと視線を合わせたあと、考えるようにして目を閉じた。
「どうだ」
それを、答える気がないと解釈したドフラミンゴは、答えを催促するように質問を重ねた。
クロコダイルは、聞いている、とでも言いたいようにちらりとドフラミンゴに視線を戻し、口をへの字に曲げた。
「…それを聞いてどうする」
「んー」
「聞いたところで、てめえに何か変化があるっていうのか」
「さあな。答え次第じゃねえのか」
「くだらねえ」
「そうか?」
「ああ。答えを聞いて左右されねえことを聞いて、どうするってんだ」
クロコダイルの、呆れたような声色に、ドフラミンゴは、にい、と口の両端を釣り上げた。
「おれに変わらねえでくれって言ってんのか」
「誰もんなこと言ってねえだろ」
相変わらず、変な思考回路だ。
クロコダイルは、そう思わずにはいられなかった。
「たとえば、だ」
至極楽しそうに、ドフラミンゴは続けた。
「例えば、おれがお前をすきと言ったとするだろう。そしたら、お前はなんて答える」
「きっと、くだらねえとか何とか言って、おれをなじるだろう」
「それを聞いたおれが、お前の前に現れなくなったら、どうする」
なんだその妄想は。
クロコダイルは、溜息をついて口を開いた。
「仮定の域を出ねえ話はくだらねえな」
「じゃあ、仮定じゃなくしよう」
「ああ?本当に消えるってのか」
「本当にそうすると言ったら」
クロコダイルは、思わず噴き出した。
「クハハ、そりゃ愉快だな」
「姿を消すか。クハハハ、おもしれえ」
クロコダイルは、悠然と寝転ぶドフラミンゴに覆いかぶさるようにして体を反転させ、ドフラミンゴの顔の両脇に手をついた。
「やってみろ」
クロコダイルのにやりとした笑みに、ドフラミンゴの顔から笑みが消える。
「もっとも」
それを満足そうに眺めるクロコダイルは、ドフラミンゴが口を開く前に二の句を告げる。
「それが出来るようなつまらねえ男なら、
答えは最初からNO、だ」
「一生てめえのものになんざならねえ」
クロコダイルの答えに、ドフラミンゴは顔を隠すようにして、手で顔を覆った。
しかし、肩はくつくつと揺れており、顔が見えなくともドフラミンゴが笑っていることがクロコダイルには伝わってくる。
それがクロコダイルには面白くなく、眉間にしわを寄せた。
「何笑ってる」
思わず、クロコダイルがそう口に出すと、ドフラミンゴは、顔を覆ったまま、ちらりと指の隙間からクロコダイルへ視線を投げる。
「フッフッフ、熱烈なラブコールだな、ワニ野郎」
ドフラミンゴが満足そうに言うと、クロコダイルは、呆気にとられたように口をぽかんと開けた。
しかし、瞬時に自分が何を言ったのか。何がドフラミンゴを愉快にさせているのかを理解したクロコダイルは、ドフラミンゴから逃れるように体を離そうとした。
でも、それをやすやすと逃すドフラミンゴではない。
クロコダイルが体を離すよりも早く、クロコダイルを大きな両手で抱え込む。
「…っ、離せ!」
「フフフ、自分で気付かなかったのがそんなに恥ずかしいか?ワニ野郎」
「違う!離せ!くそ野郎!」
「照れ隠しにしか聞こえねえ」
ばたばたともがくクロコダイルに、ドフラミンゴはいっそう笑みを深くする。
だってそうだろう。その気になれば砂にでもなって自分から遠ざかることだって出来るのに。
クロコダイルの混乱した頭にはそれすら浮かばないのか。それとも本当に照れ隠しなのか。
ドフラミンゴにとっては、どちらでもよかった。
(砂になることが思い浮かばないくらい、おれで頭がいっぱいってことだろ?)
ぎゅう、と一際強くクロコダイルを抱きしめると、クロコダイルも諦めたのか、ばたばたと体を動かすのはやめて、ドフラミンゴにされるがまま、体を預けた。
「お?」
それを意外に感じたのはドフラミンゴで、クロコダイルの顔を窺うように覗き込んだ。
すると、クロコダイルは諦めた表情を浮かべ、不服そうに口をへの字に曲げている。
「抵抗はもう終わりか?」
「…体力の無駄だ」
「フフ、素直じゃねえなあ」
「ああ?頭イカれてんのか」
口でこそ素直でないクロコダイルだが、抵抗をやめた体は、元からの疲労も手伝ってドフラミンゴの体にしなだれるかのように寄り添っていた。
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