one piece

□partner?
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乾いた風と熱を帯びた地面が心地よく、
時折降る恵みの雨で人々を潤す砂漠の国

アラバスタ。




コンコン

「サー、少しよろしいかしら?」
「ああ」

控えめなノックとともに、
カチャリとドアノブが回された。
その様子をちらとだけ目配せした部屋の主は、
執筆中の書類に目を落とした。

濡れたような黒髪に琥珀色をした双眸。

ふと目をあげた際にたれ落ちたひと房の髪はそのままだ。

「お仕事中失礼するわ。お客様よ」
「客?」

ピク、と反応した部屋の主、クロコダイルは
手を止めて有能な秘書、ニコ・ロビンに目をやった。
その表情は、今日は客人が尋ねてくる予定はなかったことを物語っている。

「ええ、どうしてもって、おっしゃるから」

くすくすと笑うその秘書の後ろには、
ピンク色のもさもさとした物体が見え隠れしていた。

「てめえかドフラミンゴ…、何の用だ」
「ッフフフ、なんだよその反応は。はるばる会いに来たっていうのによお?」

クロコダイルの反応を見て、客人はニコ・ロビンの横をするりと抜け部屋に入った。
客人が知れると、クロコダイルは書類に目を落とし直した。
右手に持つ、見ただけで質が高いと分かる羽ペンをさらりと動かし始める。

「うるせえ。どうせ下らねえ用だろう」
「そうとは限らねえぜ」

今日は砂嵐はなさそうだ、とドフラミンゴはクロコダイルのいる机までまっすぐ歩き、机に手をついた。
あいさつ代わりの軽口を叩き合う二人をくすりと見、ニコ・ロビンは部屋を出ようとした。

「あー、待て、待て。どうせ行くならこいつを持っていけ」

クロコダイルの声に振り返ると、先ほどまで
見ていた書類や机に積まれていた書類を指差された。

「あら。もう終わったの?相変わらず仕事が早くて助かるわ」
「ふん、ただサインすりゃいいだけだからな」

「ふふ、そのうち得体の知らない書類にまで
サインしてしまいそうね」

ニコ・ロビンはクロコダイルの元まで歩き、
書類を受け取った。
先のセリフを言いながら、ちらりとドフラミンゴをみると、人の悪い笑みを浮かべていた。

「俺をカス呼ばわりとはいい度胸だな
ニコ・ロビン」
「あら失礼。そういう意味じゃなくってよ」

見た目通りの短気な返事に、ニコ・ロビンは肩をすくめて笑んで見せた。

「くだらねえこと言ってねえで、さっさと持っていけ」
「了解、サー」

今度こそ部屋を退出するために歩きだしたニコ・ロビンに、クロコダイルはフンと鼻を鳴らした。

それにしても、と先ほどから黙りこくっている
でかい図体の男をちらりと見やると、地を這うような低い声で問いかける。

「てめえはいつまでそうやってる。俺を見下ろすんじゃねえよ」
「……おお」

から返事のような、心あらずという返事に、
クロコダイルは首をかしげる。
そんなクロコダイルをちらりと見たドフラミンゴは、机の向かいにある革張りのソファにどかり、と腰を下ろした。

「それで?“下らねえとも限らねえ用”はなんだ?」
「あー、それな。もういいわ。」
「ああ?…ったく、元からねえんじゃねえか」

妙に覇気のないドフラミンゴを不思議に思いつつも、クロコダイルも机を立ち、ソファに移動した。
どかり、と腰をおろしたのはドフラミンゴの向かい。

「…そこは隣じゃねえの」
「何が楽しくてでかい図体した男が二人並んで座らなくちゃなんねんだよ」

「まあ、そうか。あー、そうだ、な」
「……てめえさっきから何考えてやがる?
気色悪いったらねえな」

「いや、まあ」

だる、と背もたれに体を預け、天井を見上げる
ドフラミンゴに、クロコダイルはいよいよ苛々し始めた。

「うぜえな、何かあんなら言えよ小僧」
「ある。あるんだが…その小僧ってやめてくんない」

「小僧だから小僧って言ってんだよ、フラミンゴ小僧」
「あーっ!性に合わねえな!!」

ダン!っとソファに合わせて置かれたガラスのローテーブルに手をつき、サングラス越しに
クロコダイルをぐっと睨む。
それにふう、とため息をついたのはクロコダイルで、胸元から出した葉巻に火をつけた。

「お前!あの秘書とどういう関係だ!?」
「…ッ!?、ゲホッ」

ドフラミンゴの唐突な問いに、クロコダイルは
吸っていた煙を焦ったように吐き出した。

「ああ!?なんだそりゃあ?」

面喰った質問にドフラミンゴを見るが、
本人の目は真剣だという色がにじみ出ている。

顔面にいつも張り付いているお得意のスマイル
も、今はナリを潜めていた。

「……何をどう見てそういう質問になるんだかさっぱり分からん。」

今度は、ふう、と煙をくゆらせたクロコダイルは、呆れ気味にドフラミンゴを見やる。

「…なんださっきのやりとり。ツーカーっつうの?なんか、ただの社長と秘書じゃねえっつうか…」
「……。」

あほだ。

クロコダイルの頭の中には、その言葉しか浮かんでいなかった。

(つまり、あれか。)

「ああ、そうとも。俺とニコ・ロビンは公私ともに最高のパートナーだ」

「って、言ってほしいのか?」

クロコダイルの一言一言に、青くなったり、はてなを浮かべているドフラミンゴに、クロコダイルは頭を抱えた。

「ど、どっちなんだよ」

本当に小僧だ、こいつは。
クロコダイルはため息とともに煙を吐き出すと、つけたばかりの葉巻を灰皿にすり潰した。
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