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□続 62 years ago
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「今日は長崎に原爆が落ちた日なんだよな!!」
もちろん今日も朝から練習。
部室で着替えていると急に田島がそんなことを言い出した。
「あー、そういえばそうだな・・・」
花井が着替えながらそれに相槌を打つ。
「今日やってた、よ!原爆。」
・・・原爆をやってた・・・?
「おー俺もそのニュース見たぜ!すごいよなーあの映像!」
・・ニュースのことか。
相変わらず三橋の言葉はりかいできない。
「でも実際あったらこわいよなぁ・・」
もうすでに着替え終わった水谷がアップシューズを履きながらつぶやいた。
「戦争のニュース見るたび、この時代に生まれてきてよかったっておもうんだよね」
あの時代の人には申し訳ないんだけど、と苦笑しながらいう。
「おー、ひいじいも夏になると戦争のことよく夢に見るっていってた!」
「田島はいいよね、そばに戦争の話聞ける人がいるのってうらやましい。」
それはそうだ、とおもう。
戦争体験者がすくなくなったいま、実際の話を聞ける機会はごくわずかだ。
「黙祷すんの?」
ふと思ったことをくちにしてみた。
「そうだな・・・その一分間だけは練習中断して、黙祷すっか」
一応確認してからな。と花井がいった。
そしてその日の11:02。
一分間の黙祷を、死者へ捧げた。
なぜか一瞬工場の光景が頭をよぎった気がしたけど、
たぶん気のせい。