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□62 years ago.
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「・・・はやく・・・終わんない、かな。」

隣で作業をしていた三橋がぽそっとつぶやいた。
その言葉に驚き、俺はあわてて三橋の口を押さえる。

「ばか!聞かれたらどうすんだよ!!」

そう。国に対する批判なんて許されない。
だって俺たちは国のために、今戦っているのだから。

「だ・・・てっ・・!」

三橋の目には、見る見る涙がたまっていく。

「泣くなって!また殴られたいのか?!」

「やだっ・・・」


長崎にある、造船工場。
そこではたらいている俺たち。
いつ終わるのかわからない戦争のさなかで、
人を殺すための道具を黙々と作る日々。
三橋のように口に出してはいないものの、
実際おれも相当嫌気がさしていた。
それでも、国のため。

10時ごろに1度空襲警報が出たので、防空壕の中へ避難していた。
今は避難が解除されて工場へ戻り、作業を再開したところ。


「・・・勝つ、かな?」

「勝つにきまってんだろ。」

ラジオでもそういってる。
日本は勝ってるって。
学校でも、ずっとそうやっていわれてたから。
俺たちは疑いもしなかった。

「でも、広島、すごい爆弾が落ちた、って。」

「・・・らしいな。」

3日前に、広島には新型の爆弾が落ちたらしい。
何万人もの人がしんだらしいと昨日こっちに呼び戻されたらしい医者が言っていた。
一面が焼け野原なんて、想像もできない。


時計が11:00を知らせた。
あと1時間で昼のじかん。

「もうすぐ、休憩だ」

作業を続けながらも、嬉しそうに三橋が言う。
そうだな、と返事をして、タオルで汗をふいた。

時計がなってから2分後。













そのときだった。









一瞬にして視界が真っ白になり、






ものすごい爆音が鳴り響き、






横殴りの爆風に吹き飛ばされた。
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