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□会いたくて
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side 環
プルルルル プルルルル
深夜、急に携帯がなった。
『着信 鏡夜』
その表記を見たとたんに、寝ぼけた頭が一気に覚醒する。
こんな時間に電話をかけてきたことなど一度もない。
何かあったのか、と不安になりながら通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『・・・環。』
「鏡夜?」
しばらく間が続き、もう一度呼びかけようとした時、
『・・・・い・・。』
受話器の向こうからかすかに声が聞こえた。
「え?」
聞き取れずに思わず聞き直す。
「・・・すぐ、会いたい。」
初めてきいた
こんなにも消えそうで、掠れた、声。
いつだってすべてを見切ったような顔で、見抜かれることを恐れる彼が。
ただ一言
『会いたい』と。
「いっ・・・今いくから!」
そういって、慌てて電話をきった後、すぐに家を飛び出した。