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□作成中 水栄
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「もーやだっ!勉強なんかきらいだ…!」
机の上に広げた参考書の上へと突っ伏す。
頭の中にはさっきまで覚えていた英単語がぐるぐると未だ消えることなく――忘れたら困るんだけど――渦巻き続け、さらに苛立ちを募らせていく。
「何で受験勉強なんかしなきゃいけないんだろ…」
この一年間、幾度と無く繰り返した言葉。
仕方がないと頭ではわかっていても、感情はそう素直に受け入れてはくれない。
『俺、水谷のことまってるから。』
評定のよかった栄口は指定校推薦で先に合格を決めた。
栄口が合格して嬉しくないはずがないし、実際自分のことのように喜んだ。
けれど、どこか妬ましい気持ちを抱いている自分もいて。
周りが決まって行く中、焦りばかりがどんどんとつのっていく。
栄口も気まずいのだろうか、合格の報告をされて以来、ほとんど全くと言っていいほど連絡を取っていない。
「いいなぁ栄口は…。」
気休めにもならない言葉を呟いて、すでに冷めているコーヒーへとまた口をつけた。
高3の3学期にもなると、登校日は週に1回程度になる。
ましてやクラスが違えば顔を会わせることもなく、会えない寂しさを感じる反面、会わなくてもいい事に対して若干の安心感も抱いていた。
「…栄口は待ってるって言ってたもんね」
あの日、「待っているから」と、真剣な目をしていっていた栄口を思い出す。
今頃は何をしているんだろう。
自分と同じように、会えなくて寂しいとおもってくれているのだろうか。
それとも、自分のことなど忘れて、大学の準備にバイトにと忙しい日々を送っているのだろうか。
電源を落としていた携帯に手を伸ばし、5時間ぶりに電源を入れる。
光が灯ったディスプレイには『新着メール:3件』の表示。
もしかしてとドキドキしながらメールボックスを開くと、
「…全部メルマガですか…」
届いていた三件新着メールは、メルマガと分類されたボックスにのみ割り振られていた。
小さくため息をついて携帯を閉じ、冷たくなったコーヒーを入れ直すためにキッチンへと降りていった。
パタンとドアがしまり、所有者のいなくなった携帯が、もう一度机の上でメールの受信を告げていた。