小話

□TF2
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彼がいるときは、兄たちは自分たちがじゃれているのをただ眺めているだけだということに、スピードブレイカーも最近ようやく気がついた。
自分たちを見守ってはいるがそれだけで、積極的に関わってこようとはしない。なので、混じればいいじゃないかと言ったのだ。二人で話すのが嫌ではないが、基本的に人数は多ければ多いほど嬉しいし楽しいと、スピードブレイカーは思う。兄たちのことも彼のことも大好きだから尚更だ。兄たちと彼が仲良くしてくれればいいと思うのだが、しかしその提案には兄二人は苦笑してやめておくよと言うばかりなのだった(普段豪快な長兄がそんな笑い方をするなんて似合わなくて可笑しかった!)。

「なーんでなんだろ」

納得いかないとむくれるスピードブレイカーに、件の友人もまた苦笑を浮かべた。それがますます彼の機嫌を悪くする。

「だってワイルドライドの兄貴もマグちゃんのこと結構いいヤツだって認めてたんだぜ?マッハアラートの兄貴だってきっと同じに思ってる。なら仲良くしたっていいじゃんか。せっかく仲間になったのにさあ、話ぐらいしたっていーじゃん!もったいないって!」

お前ももっと人の輪に入れよなーと文句を垂れる友人に、マグちゃんと呼ばれた彼――ゴッドマグナスという大変立派な名前があるのだが――はますます口元の笑みを深くして、だがなと初めて口を開いた。

「他の奴と話してたら、その間お前をほったらかしにしちまうだろう」

その返答は予想外だったらしい、スピードブレイカーはぽかんと口を半端に開き、しかしすぐに、でもさ、と唇を尖らせた。

「オレばっかりじゃなくてさ、色んなヤツと仲良くするのも大事だろ?だからさぁ、」
「お前と他の連中を選べと言われるなら、他なぞいらん」
「へ?」

きょとんとするスピードブレイカーだが、それに構わずゴッドマグナスは至極真面目に言葉を継ぐ。

「俺にとってはそういうことだ。俺はお前がいるならそれでいい。他がどうだろうと知ったことか」
「だぁからそれじゃダメなんだってばー」

平行線を辿るばかりの会話に、スピードブレイカーはどう言えばいいのかと頭を抱え、肩を落としてうなだれた。
そんな彼を側に寄せ、ゴッドマグナスは上機嫌によしよしと頭を撫でてくる。されるがままになりながら、スピードブレイカーは疲労感にはあと大きく嘆息した。






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