□拍手作文
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そもそも望んで手元に置こうとしたのは自分であったのだけれど、いざ戦を前にして失うやもしれぬと思うとやはりその選択は間違いであったかと悩まずにはいられない。彼の才を惜しむのは勿論だが、それ以前にただただ彼が愛しかったので。ここで手放し然るべきところへ送り出せばきっと彼の身は安全なのだろう。けれども彼が側にいない自分の姿など、もはや想像もできないのであった。
むざと死なせたくはないし出来れば傷を負わせたくもない、しかし側から離したくもない。これではまるきりこどもの我儘だと自嘲する。さてではこの我儘をそれと悟られずに通すには、どのような策を立てれば善いか。思案に暮れて天井を仰ぐと深く腰掛けた古い椅子がぎしりと鳴った。


(勘→七)
 
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