□わかむらさき・弐
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 カンベエは時折、シチロージを閨に招く。
 招くといっても一番初めに何もしないと言った手前、粗末な狭い寝台に二人並んで文字通りに寝るだけである。今のところは、であるが。
 彼の部屋に、他に寝台代わりになるようなものは何もない。カンベエはシチロージを床に寝かせるつもりはなく、シチロージにしても目上の者にそんなことをさせるなど以ての外であったから、仕方がないといえば仕方のないことではあったのだが、これが意外にいい効果を生んだ。寝難さに翌朝睡眠不足の顔で出て行くと、周囲は勝手に勘違いをするのである。それに気付いたカンベエが、もう一押しと言い出した小細工がこれであった。

これって本当に効果あるんですかね。

 夜着の襟元をかき合わせながらシチロージが呟く。夜目にも眩しい白い肌が隠れるのを、カンベエは勿体なく思った。無論顔には出さない。

まあ話の補強にはなる。根掘り葉掘り訊く奴がいるかもしれんが、それは適当にあしらっておけ。できるだろう。

 嫌そうに顰められた顔を満足そうに見やって、カンベエは自分も横になると少年を引き寄せた。引っ付かないと寝台から落ちるのだ。


 
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