□ゆめのはじめ
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いつのことだったか、生還は酷く難しいと思われた合戦の前、此度こそは死ぬかもしれんなとこぼしたとき、彼は実にあっけらかんとした様子で返してきたものだ。

「私の命はカンベエ様にお預けしておりますからね」

端整な顔立ちの副官は、そう言ってこちらの右の手を取り、その白い指で甲に刻んだ六花の上をするりと撫ぜた。

「あなたをお守りし、あなたの為に生きると誓いました。どう使っていただこうとも構いません、死ねと言われれば死にもしましょう」
「無駄死には許さん。いざとなれば生き残ることを優先せよと、」
「ええ、承知しておりますとも。ですが私の生きる理由はあなたにあります。それ故まことに私を生かすおつもりがあるのなら、まずはカンベエ様が生きて下さいませんと」
 
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