他短編

□薔薇を貴方に
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捧げたいのは薔薇じゃなくて







本当は――――――――












薔薇を貴方に











いつもあなたは夢に出てきて私の名前を呼ぶ。




いつもはつり上げている眉毛を優しく下げて。




ある時は困ったように苦笑して。





そんな景吾はいつも俺様なくせに優しくて。




私を惜しみなく愛してくれてるとわかる。





だけど、私たちは夢のために別れる決断をしたから。




あなたに触れられるのは現実より遥かに夢の中での方が多くて。




それが本当は凄く淋しくて、物足りなくて、焦りにも似た感情を呼び起こすのだけど。




それでも、もしかしたら景吾がいるから私は夢に向かって歩めを進めていられるのかも知れない。









貴方がいて、よかった。









そう心の底から思える人に出逢えて、私は幸せ者だね。






でも、ね。




あまりにも会えないのは淋し過ぎるから。





時々はあなたに会いに行くのを



あなたに甘えるのを




許してね‥―――?



























「景吾?」


『あぁ。そっちはどうだ?』




ざわつくプラットホーム。


発着の案内、電車の走る音、人々の話し声‥



電車の中でかかってきた彼からの電話を取れなかったから乗り換えるために降りた駅で折り返せば、いつも通りの少し高めでプライドが高そうな景吾の声が聞こえる。



馬鹿ね‥私、それだけで鼓動が速まってる。




「今、最後の乗り換えの駅に着いたところ。そっちには23時58分に着くみたい」


『わかった。じゃあその時間にはホームにいるようにするぜ。ホームは7番線でいいんだよな?』


「ううん。今日の電車は8番線」


『そうか。じゃあ8番線で待ってる』


「うん、ありがと、景吾」


『いや、いい』




彼の声に被さるように発着電車の案内が流れる。



それは私が乗る電車のもので。




『電車が着くみてぇだな』


「うん」


『‥じゃ、また後でな』


「‥うん!また後で」





彼に促され、電話を切る。


今日はいつもよりさっぱり切れた。



この後、会える。




その確信がきっと私達を繋ぎ留めてるから‥




私は大きな荷物を持つと、電車に乗り込んだ――――――

























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