他短編

□Lonely Lover
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あなたがくれる奇跡は







まるで‥









 Lonely Lover 










大きな大きな‥一人部屋とは思えない大きな部屋の中。




私は一人窓際にある椅子に座ってムスッとしていた。





きっかけはきっと些細なこと。



バカみたいに意地を張って、彼に背中を向けたのは一時間前。




思えば彼の部屋なのに出てけとも言わなかったのは‥






「景吾」






振り返って呼べば。








「‥あら」






胸に本を抱え込んで、眉にシワを寄せて眠り込んでいる景吾。




考え込んでるだけじゃ、あんな格好しないもの。





そろそろと音をたてないように景吾に近付く。




近くで見れば、少しいらっとくるほど整った顔。



まったく‥中身は俺様だっていうのにどうしてこんなにカッコイイのかしら?






‥そうよ。本当に俺様なんだから。



私の予定なんて関係なしに話を進めて。



本当にびっくりしたわ。



昔からよくそういうこと言っていたけど、まさか本当にはしないと思ってた。



だから、いきなり目の前にヘリコプターが下りて来た時、夢かと思ったの。






眉目麗しい景吾の寝顔。



喧嘩なんてしなければよかった。





景吾がくれた、奇跡。


私も織姫と一緒。



8日からはまた一人の時間を過ごさなければいけないのに。



僅かなあなたとの時間をこんなことで潰してしまって。




‥ちゃんとあなたと向き合わなくちゃ、すぐ明日になっちゃう。






「‥ん」


「あ、景吾」


「‥あん、なんだよ」




眠たそうに髪をかき上げ、本をパタリと閉じ起き上がった景吾は怠そうな視線を私に向ける。



その仕草がかっこよくて。





「‥あの、いちゃいちゃしませんか?」






目の前の景吾が多少間を開けてから目を見開いた。



‥えっと。私‥今何て言ったんだろう?




景吾と同じタイミングで自分の言ったことを理解して。




耳まで熱を持つくらい恥ずかしい。




「あ‥あの、なんでも‥」


「‥こっちに来い」





ソファーにもたれ掛かる景吾が私を手招きする。



それに従わないほど私は満たされてなくて。




「よし」




手を引かれて、隣に座ればぎゅっと抱きしめられる。



否応なしに景吾の肩に顔を埋めると、香る景吾の匂い。



声は聞けても、匂いや温かさはいつもは感じられないから。




「景吾、好き」


「当たり前だな」




そうやって口の端を吊り上げて不敵に笑う景吾を見て幸せになる。




本当‥私は景吾バカだ。





「‥でも景吾もいきなりヘリコプターで来るなんてびっくりしたわ」


「さらってやるって前に言っただろ?」


「本当にするなんて思わなかったわよ」


「俺様は有言実行なんだよ」


「そうだったわね」


「それに‥」




景吾の腕の力が多少強まって、どうしたのかと彼の顔を見上げれば。




「それに牽牛でさえ恋人に会える日だってのに、俺様が会えないのは腹が立つ」






あぁ、なんて俺様発言。




でも‥






「‥ふっ」


「何笑ってんだ、あーん?」




口ぶりの割りに照れている景吾に抑え切れなかった笑いの波がまた押し寄せる。



まさか景吾が七夕伝説を気にするなんて思ってもみなかったし‥



何よりも嬉しかったの。



だって、景吾も淋しいって思ってくれたんでしょ?




「ごめんね、景吾が可愛くて」




止まらない笑いに景吾に背を向けると、彼が意外にも恥ずかしそうな声を出して。



「てめっ‥んなこと言ってると襲うぞ」


「だって仕方ないもん。可愛いのは可愛いもーん」


「‥悪かったな」


「景吾、大好き!」


「あぁ、俺も好きだ」











あぁ、やっぱり幸せ。






せっかく景吾が天の川代わりにヘリコプターで迎えに来てくれたんだから、今日は。








明日また夢から覚めないといけないとしても、今日だけは。













あなたの傍で抱きしめよう












幸せを―――――――――




























End









景吾さん七夕夢です。


久々の拍手更新で名前を使わない難しさに苦戦しましたが、楽しかったです。


でも時々、私の書く景吾さんは少し丸過ぎるかなとも思ったり‥


仕方ないんです。私はデレな景吾が好きだから(笑)


感想などよろしかったら下さい。



次の更新は10月4日、景吾さんの誕生日です。



では。





2008/07/07




拍手から移動:2008年10月4日
 

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