他短編

□X'mas Rose
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お前の声が






愛おしい―――――










X'mas Rose







11月下旬。今年は暖冬だと思っていたが、この二日三日で急に寒くなった。




もう後1週間もしないうちに12月かと思うと、1年は早いなんて俺らしくもねぇことを考えちまう。




受話器越しに響くお前の声が今は心地よくも、少し淋しい。









『ね、聞いている?景吾』


「聞いてるぜ」


『‥白々しいなぁ』


「それよりも休みはいつからだよ」


『21日に講義が終わるから22日からかな?』


「そうか」


『22日の夜には東京に戻るから、景吾に会えるのは23日から‥かな』








大学進学のために始まったいつもは会えない遠距離恋愛。




いくら大学の休みが長いからといっても、そんなに会えるわけでもない。




高校までの生活サイクルと掛け離れ過ぎている今の生活に、次第に慣れていく自分がお前との時間を忘れてしまうかもしれないのが恐ろしい。









「馬鹿か。22日の夜、迎えに行く」


『えっ、景吾の家にお泊りってこと?』


「嫌じゃねぇだろう?こっちだって溜まってんだ、早く会いたいだろうがよ」


『うわ‥景吾、下品』


「違う。言いたいことが色々あんだよ!」


『‥電話じゃ、言えないこと?』


「言えねぇなぁ‥。伝わりにくいからな」


『そっか』







お前に触れたい。




触れて、視線を合わせて、細かなことも感じとれるくらい近付いて。



言葉にしなくても感じとれる幸せを実感したい。








『なんか早く休みになんないかなぁ』


「一ヶ月なんてすぐだぜ?」


『そうよね。すぐよね!』


「その前に会いたいなら、ヘリでさらいに行ってもいいが?」


『け、景吾‥スケール大きすぎ‥』






さっきまで淋しそうな声をしていた彼女も、俺様の気の利いたジョークに少しだけ声を明るくした。




せっかく話してられるんだ。





切なくなるなんて、もったいないだろう?




まぁ、さっきまで淋しがっていた俺が言えるわけねぇが。





『そう言えばさ、次に会う時はクリスマスの頃よね』


「あぁ、今年はどこに行きたい?」


『洋服買いに行きたいな。景吾がいいの選んでよ』


「わかった。俺様のセンスを見せ付けてやるぜ」


『景吾のセンス微妙だからなぁ‥』


「んだと!?ぜってぇ凄いって言わせてやるぜ!!」


『アハハー。期待しないで待ってるわ』


「期待しろ!!」













こうやって、声を聞くだけで切なくなるのに心地良くて‥






矛盾が生じる想いがおかしくもお前が与えるものだからいいかと思う。。






そんな自分に笑えるが。









きっとお前は毒のある花なんだな。







一度触れてしまえば繰り返し欲しくなる。









苦しくなるのはその毒に侵食されるからなのだろう?








ならばその毒でもっと俺を酔わせてみろよ。







その真紅の唇で










クリスマスローズのように。












End..








31729番九条凜様リクエスト跡部切甘です。


クリスマス前の二人。



後1ヶ月で会えるという喜びと、後1ヶ月もあるという淋しさが織り混ざっているんですね。



拍手連載第4話です。




次はクリスマスに更新します。




ちなみに、クリスマスローズは根に毒を持つ花だそうです。



では。



2007年11月30日




更新日:2007年12月24日

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