星のカービィ
□星を輝かせるには
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ここ数日、メタナイトはパソコンを修理していたため、
数時間しか睡眠をとっていなかった。
魔獣の情報を探るために、ホリーナイトメア社のネットワークに侵入しようとしたのだか、データバンクに仕掛けられていたウイルスに返り討ちされてしまったのだ。
何とか脱出したが、一緒に来てしまったウイルスが、メタナイトのパソコンのあらゆる機能を破壊しようとした。
色々試して何とか撃退したが、データの4割は持っていかれてしまうという結果になってしまった。
メタナイトにしては、大切なデータは守れたのだから、それで良しと割り切っているようだが。
欠伸をかみ殺しつつ城の廊下を歩いていると、遠くからフームが走ってきた。
話を聞くと何やら用事があるらしいので、途中まで一緒に行くことにした。
しばらく会話がないまま歩いていたが、フームが口を開いた。
「メタナイト卿、元気?」
「元気だが・・・いきなり何だ?」
「うそ。最近寝てないでしょう?」
一瞬メタナイトの歩く速度が落ちたが、何事もなかったように速度を戻し、わずかに先に進んだフームの横に並んだ。
実を言うと、フームはメタナイトが最近徹夜をしていることを知っていた。
それによって相当眠いはずなのに、メタナイトはデデデに押し付けられた仕事を文句も言わずにやっている。
フームはそんな彼の体調を心配しているのだ。
「私にしては十分な睡眠をとっているが?」
「一日2時間しか寝ていないのに?」
「・・・なぜそれを知っているのだ?」
「毎日夜遅くまで部屋の明かりが点いていれば、それぐらい分かるわ。」
今度は完全にメタナイトの歩みが止まった。
少し遅れて、フームも止まる。
そして後ろに振り返った。
彼女の特徴的なポニーテールが、動きにあわせて揺れる。
「声を掛けてくれれば、喜んで手伝いに行ったのに・・・。」
「フームの時間を削る訳にはいかないからな。それと、無理をしてもらいたくない。」
メタナイトは、真剣な表情のフームから僅かに視線を逸らして答えた。
そんな彼の視線を追いかけるように、フームは顔を近づけた。
「メタナイト卿は今、私の移動時間を長くして時間を削っているわ。だけどあなたの考えや気遣いが分かって、とても有意義な時間だと思うの。それに、私はそんなに柔じゃないのよ。メタナイト卿はどう思う?」
フームのしっかりとした言葉に、メタナイトは顔を上げ、彼女の目を見た。
「確かに、こういう時間は久しぶりだな。」
そしてフームに近づくと、彼女の髪を触った。
いつも魔獣騒ぎやデデデのわがままに振り回されて、このようにのんびりとする時間は少ない。
ましてやフームと話す時間となると、ほとんどゼロに近い状態だ。
「私も、この時間はとても有意義だと思う。フームが手伝いたいと思っていることが良く分かったしな。」
「だったら―。」
メタナイトはフームの手を取ると、軽く口付けをした。
「私の手伝いをして頂けますかな?姫君。」
「は、はいっ///」
見事な不意打ちに真っ赤になりつつも、フームは返事をした。
メタナイトは微笑み、窓から夜空を見上げた。
空には無数の星が輝いている。
暗い空の中で星が綺麗に見えるのは、光が当たっているから。
それならば―
「私にとって、フームは光だな。」
よりいっそう輝くために、必要な存在。
Fin.