星のカービィ
□ホワイトデーには
1ページ/1ページ
三月十四日、ホワイトデー。
一般的にはバレンタインデーのお返しをする日とされている。
「だって、カービィ。」
「ぽよ?」
フームの言葉に首をかしげるカービィ。
何を言われたか良く分からなかったらしい。
独り言に近い形で話していたので、返事は期待していなかったが。
首を傾げているカービィの頭を撫でながら、フームは少し遠いところを見ていた。
「ホワイトデー…か。」
フームがバレンタインデーにチョコをプレゼントしたのは五人。
そのうち一人には本命チョコをあげている。
おそらく相手はそのことに気が付いただろう。
そうすると彼の性格上、お返しをしないではいられない。
「まさか、ね。」
台所に立って料理をしている彼の姿を想像したが、ありえないことだと思いその可能性を消した。
期待していると、外れたときのショックが大きい。
フームは小さなため息をつくと、下を向いた。
その拍子に、カービィを撫でていたはずの手が宙を切った。
「あれ?カービィ?」
先程まで目の前にいた筈だが、いつの間にかいなくなっている。
あたりを見渡していると、
すぐそばの台所が騒々しいことに気が付いた。
不思議に思って中を覗いてみると―
ガッシャン
「こら、待て!カービィ!」
「ぽっぽよ〜♪」
台所からクッキーを大量に口に含んで逃げるカービィと、慌てて追いかけるメタナイトが出てきた。
まさにドカドカという擬音がぴったりな勢いだ。
「メタナイト卿っ?!」
「フーム…っ!?」
フームの姿に気が付いたメタナイトは、慌てて急ブレーキをかけた。
しまった、という顔をしている。
その隙にカービィはフームの後ろに隠れた。
「カービィを追いかけているなんて、珍しいわね。どうしたの?」
「カービィに、私が作った料理を吸い込まれてしまってな」
「料理?」
「これのことだ。」
そう言ってメタナイトは、懐から綺麗にラッピングされた包みを取り出し、フームの手に置いた。
「え?」
「今日はホワイトデーだろ?」
茶目っ気たっぷりにウインクしてみせるメタナイト。
「本当はもうちょっと雰囲気を盛り上げたかったけどな」と小さな声で付け加えたが、フームの耳に届いていない。
反応がないので不安になっていると、いきなりフームが抱きついてきた。
「!?」
「ありがとう、メタナイト卿!!」
返事の変わりに、メタナイトも想いを込めておもいっきり抱きしめた。
Fin.