西ブロック

summer valentine
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―四年前



「…っふぇ……ぐす…」
また今日も此所で独り哭く。


…また、からかわれた

髪の色、目の色、紅の帯状痕


好きで、こんなになったわけじゃない。

「どうして…ぼくばっかり…!」
悔しくて悔しくて、抗えない自分に腹がたって…



「泣いているのか?」
何処かで声がした

ふと顔をあげる。
カーテンの側に人影....


「君は...誰?」


彼は微笑して答えた。
「さぁ...誰でしょう?」

「...君は、僕のこと、変だとか思わないの....?」

「何で?」
「...へ? 何でって...」
「ああ、髪色のこと?普通にきれいだと思うけど?」

―綺麗....?
「ホントに...?」
「うん。なんか珍しいよな。」


初めてだ...
そんな風に言われたのは。


彼の側でカーテンがはためいた。
左右から彼を包み込む。


それはとても美しくて、ぼくは思わず息を飲んだ。


逆光で顔は見えなかった。
名前も知らなかった。


でも、なんか嬉しかった。


ぼくの存在を、肯定してくれている気がして...




ぼくが彼を初めて見た日――

それは、ある夏の日の出会いだった。

end...


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